東京商工リサーチが発表した「インボイス制度に関する調査」結果(有効回答数5896社)によると、法人のインボイス制度の8月上旬時点の登録状況は、「申請した」は92.6%と9割超に達した。また、「9月末までにする予定」は4.1%、「10月以降にする予定」は1.2%で、これらを含め登録意向を示す企業は98.0%にのぼる。一方、「申請しておらず、方針を決めていない」が0.9%、「しておらず、する予定はない」は1.0%にとどまった。
国税庁が公表するインボイス制度の登録件数は、法人と個人事業主を合わせて7月末で342万件に達した。ただ、月間登録はピークを越え、登録取下げ等もあるのか登録ペースは鈍化している。インボイス制度開始まで残り1ヵ月と迫っている。まだ、登録しない企業や免税事業者との取引に方針が決まらない企業も多い。免税事業者には経過措置が新たに設定されたが、現在の登録状況では開始時に混乱が生じる可能性も出てきた。
免税事業者を除き、インボイス制度を理解している法人のインボイス受領の準備は、「完了している」は71.7%と、7割超がすでに準備を終えたと回答。一方で、「完了していない」は28.2%だった。制度開始まで1ヵ月余りとなったが、まだ準備できていない(していない)企業は約3割あり、対応は二分化している。規模別では、「完了している」は大企業が68.8%、中小企業が72.1%で、中小企業の準備が先行している。
インボイス制度の開始後の取引方針は、インボイス制度に登録しない免税事業者との取引について、「これまで通り」は55.4%で、前回2022年12月調査から15.1ポイント上昇した。一方、「免税事業者とは取引しない」は8.3%、「取引価格を引き下げる」は3.4%で、取引打切りや取引価格の引下げを求める企業が合計11.7%と1割強を占めた。こうした動きが強まると、制度開始時に免税事業者への影響が出る可能性もある。
また、「検討中」は32.7%で、前回調査から14.0ポイント減少したが、まだ3割強が態度を決めかねている。規模別では、「これまで通り」は大企業が63.9%、中小企業が54.3%で、中小企業が9.6ポイント低かった。「免税事業者とは取引しない」は大企業が5.1%、中小企業が8.7%。「検討中」は大企業が30.3%、中小企業が33.0%で、前回調査から低下したが、それぞれ3割強が方針を決めておらず、難しい選択を迫られているようだ。
インボイス制度登録は任意で、免税事業者を選択する事業者は基本的に小・零細規模のため、煩雑な作業などの事務負担も大きい。政府や国税庁は消費税を相殺できる経過措置だけでなく、丁寧な支援を継続し、取引先も小・零細事業者への配慮ある対応が求められる。制度開始を10月に控えるが、準備不足や態度を決めかねる事業者も少なくない。徴税が小・零細企業、フリーランスの廃業を加速させないように慎重な制度運用が求められる。
同調査結果は↓