ガソリン等価格上昇、年間1万6000円の家計負担増

 第一生命経済研究所が発表した「ガソリン・灯油価格上昇による家計負担増」と題したレポートでは、ガソリン等価格上昇による家計負担増は年間1万6000円と試算している。足元ではガソリン価格は181.9円、灯油価格も120.6円と、それぞれ2008年以来の水準だが、今後も補助率は減額されていくことから、ガソリン、灯油価格は一段と上昇していくことが避けられず、補助金が終了する10月になれば、ガソリン価格200円も視野に入る。

 ガソリン、灯油は生活必需品に近い性格を持つため、使用量を大幅に減らすことは困難であり、値上がりが家計負担に直結する。仮に、1リットルあたりのガソリン価格が200円、灯油価格が140円まで上昇し、その水準で1年間高止まりした場合に一世帯あたりの家計負担が年間でどの程度増えるかを試算すると、2022年と比較して、全国平均では一世帯あたり年間1万6000円の負担増になることが分かった。

 ガソリンや灯油価格は、地域によって消費額が大きく異なるという特徴がある。例えば、最も負担増が小さい東京都区部では年間3700円程度に過ぎないのに対して、最も大きい山口市では1万8000円程度に達するなど、5倍近い差がある。一般的に、公共交通機関の利用が多い東京や大阪といった大都市ではガソリン支出は少ないのに対して、自家用車を用いることが多い地方圏では支出が多い傾向がある。

 灯油は地域差がさらに大きい。県庁所在地別にみると、最も支負担増が小さい神戸市では年間400円程度に過ぎないが、最も大きい青森市では2万3000円近くに達する。冬場の気温が低く暖房需要が多い地域における負担増が圧倒的に大きいことが灯油の特徴だ。ガソリン・灯油補助金は9月末で終了する予定だが、その後も原油価格の上昇や円安進行が続いていた場合、こうした地域での負担は極めて大きなものになる。

 ガソリン負担増額と灯油負担増額を合わせてみると、全国平均での年間負担増額は1万6000円だが、県庁所在地別で最も負担額の小さい東京都区部では4300円にとどまる一方、最も大きい青森市では3万5200円に達するなど、約8倍もの差がある。また、通勤に自家用車を用いている家計ではそれ以上の負担になる。こうしたバラツキの大きさを考えると、単純に全国平均だけで語ることは難しい面もあることに注意が必要となる。

 以上のように、ガソリン、灯油価格上昇により、地域によっては非常に大きな負担増がのしかかる。ガソリン、灯油価格は生活必需品に近い性格を持つため、使用量を大幅に減らすことは困難であり、値上がりが家計負担に直結する。個人消費は景気の牽引役として期待されているが、ガソリン、灯油価格の上昇が家計の節約行動につながり、消費回復の頭を押さえることが懸念される。

 レポートの全文は

https://www.dlri.co.jp/files/macro/271289.pdf