仕事と育児の両立支援、企業の半数が「業務に支障」

 東京商工リサーチが発表した「少子化対策に関するアンケート調査」結果(有効回答数5283社)によると、「3歳までの在宅勤務」、「3歳までのフレックスタイム制の適用」、「就学前までの残業免除権の拡大」のうち、1つ以上の導入で「業務に支障が出る」と回答した企業が半数(49.9%)を占めた。従業員数別では、「300人以上」で「支障あり」が59.7%と最も高く、従業員数が少ないほど「支障あり」が下がる傾向がみられた。

 大企業は女性の雇用拡大に取り組んでいるほか、責任ある職務に就いた社員のカバーが難しいことも背景にあるようだ。一方、「支障あり」との中小企業は49.6%で、大企業が2.3ポイント上回った。中小・零細企業は、子育て世代の女性雇用数が少なく、出産や育児への支援の影響が大企業より小さいとみられる。さらに、中小・零細企業ほど、男性を含めた子育て関連支援制度の整備が進んでいないことも要因として挙げられる。

 ただ、規模を問わず、仕事と育児の両立支援策が業務に支障が出る企業は約半数となった。支援策別では、「支障あり」の回答率では、「3歳までの在宅勤務」が38.1%と最も高く、次いで、「3歳までのフレックスタイム制の適用」が26.1%、「就学前までの残業免除権の拡大」が23.7%だった。コロナ禍で経験した「在宅勤務」については、社内コミュニケーションなどへの影響も指摘されており、効率化には弾力的な運用も必要とみられる。

 従業員数別では、「支障あり」が最も高かったのは「300人以上」の59.7%。一方、「5人未満」は25.7%と、従業員数が少ないほど「支障あり」と回答した企業が低かった。中小・零細企業は、従業員の高齢化や採用難などで少子化対策の両立支援策が必要な年代が少ないことも要因と思われる。支援策が広がると従業員が育児に取り組みやすくなる一方、中小・零細企業では出産・育児を行う世代の雇用をさらに抑制することが危惧される。

 コロナ禍を契機に在宅勤務やフレックスタイム制が広がり、仕事と育児の両立支援の地盤は整いつつある。政府の支援策の拡充で仕事と育児が両立しやすくなることが期待される。だが、資金的な制約で支援策の導入が難しい企業では、子育て世代の働き手の雇用を抑制することが懸念される。従業員の働き方に加え、子育て世代の従業員採用への支援を抱き合わせた制度の検討も必要だろう。

 同調査結果は

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1197745_1527.html