コロナ借換保証で返済軽減、中小は経営改革のテコに

 コロナ禍で中小企業や個人事業者の資金繰り危機をひとまず救ったのが「民間ゼロゼロ融資」と呼ばれる無担保、3年間実質無利子のコロナ対応融資だった。ただ、苦境から脱し切れていない企業が多いなか、民間ゼロゼロ融資の多くが元本返済の開始時期を迎えつつある。中小企業庁では、「コロナ借換保証」を設け、主に民間ゼロゼロ融資の返済負担を軽減することによって中小企業の経営を支援する。

 民間ゼロゼロ融資は、当初3年間は実質無利子で融資を受けられ、信用保証料も原則無料だった。民間ゼロゼロ融資の保証承諾実績は計137万件の総額23兆円にのぼり、公庫融資や持続化給付金などとともに中小企業の資金繰りを支えた。一方で、据置期間のない融資や短い融資では返済がすでに始まっているが、据置期間3年程度のものは2023年7月から2024年4月にかけて集中的に返済開始時期が訪れる。

 据置期間と無利子期間の終了にともなう元本返済、利払いの開始が重なると、倒産が増える恐れがある。そこで、主に民間ゼロゼロ融資を新たな融資に借り換えることによって返済負担の軽減を図るため、中企庁は、国が保証料の一部を補助するコロナ借換保証を創設した。最近1ヵ月の売上高が前年同月より5%以上減少した事業者や、売上高がコロナ禍前より20%以上減少している事業者などが対象となる。受付は1月から始まっている。

 この制度を利用すると、最長10年の融資に借り換えられ、そのうち最長5年を据置期間に設定できる。ただし、借換え後の融資には民間ゼロゼロ融資と違って無利子期間がない。信用保証料については、保証料率を0.85%から0.2%まで引き下げるなどの補助を国が措置することで事業者の負担を軽減している。国の補助に加え、独自の補助を上乗せしてさらに低率、あるいは無料とする自治体もある。

 コロナ借換保証による融資には、コロナ禍で苦しむ企業は資金繰りのためだけでなく、事業の再構築などの前向きな投資のための資金調達にもこの制度を使うことができる。制度を利用する際には、事業計画(経営行動計画書)の策定が必要となる。その中には、自社の現状認識に関する分析や長期的な将来目標、その基盤を作るための具体的な行動プラン、収支・返済計画などを盛り込むことになっている。

 本年1月の受付開始から5月末までに全国の信用保証協会が応諾したコロナ借換保証は約4万件・1兆円にのぼる。そして、コロナ禍前への回復を待つだけでは、膨らんだ負債で経営が立ち行かなくなる恐れのある企業が増えかねない。中小企業庁はコロナ借換保証などを通じて、自社の特徴を生かす工夫を凝らしながら生産性や収益力を高めようとする企業の取組みを支援していくとしている。