勤務先から支給を受ける現物支給の給与は支給時に所得税の課税対象とされるが、その現物支給の給与が、「税制非適格ストックオプション」(譲渡制限の付されたストックオプション)である場合には、そのストックオプションを譲渡して所得を実現させることができないことから、ストックオプションの付与時に所得を認識せず、そのストックオプションを行使した日の属する年分の給与所得として所得税の課税対象とすることとされている。
そこで、勤務先から譲渡制限の付されたストックオプション「税制非適格ストックオプション」を無償で取得した場合の課税関係をみていこう。例えば、発行会社の株価等が、ストックオプションの付与時「200」、ストックオプションの行使時「800」(権利行使価額200)、権利行使により取得した株式の譲渡時「1000」のケースで、税制非適格ストックオプション(無償・有利発行型))の課税関係は、以下の通りとなる。
それは、(1)付与時の経済的利益は、そのストックオプションには譲渡制限が付されており、譲渡して所得を実現させることができないので、課税関係は生じない。(2)行使時(株式の取得時)の経済的利益は、給与所得となる。経済的利益の額は、行使時の株価(800)から権利行使価額(200)を差し引いた600となる。発行会社は、その経済的利益について、源泉所得税を徴収して納付する必要がある。
次に、(3)そのストックオプションを行使して取得した株式を売却した場合、株式譲渡益課税の対象となり、株式譲渡益は、譲渡時の株価(1000)から、行使時の株価(800)を差し引いた200となる。他方で、勤務先から適正な時価(50)で有償取得したケースでの課税関係は、まず、(1)税制非適格ストックオプション(有償型)は、そのストックオプションを適正な時価で購入していることから、経済的利益は発生せず、課税関係は生じない。
次に、(2)そのストックオプションの行使時の経済的利益(ストックオプションの値上がり益)については、所得税法上、認識しないこととされている。そして、(3)そのストックオプションを行使して取得した株式を売却した場合に、株式譲渡益課税の対象となる。株式譲渡益は、譲渡時の株価(1000)から、当該ストックオプションの購入価額(50)と権利行使価額(200)の合計額(250)を差し引いた750となる。