下請法違反の親事業者に勧告・指導が最多の8671件

 中小企業者等に対する下請取引においては、親事業者の下請法違反行為により下請事業者が不利益を受けている場合であっても、下請事業者からの自発的な情報提供が期待しにくい実態にある。このため、公正取引委員会では、親事業者及び当該親事業者と取引のある下請事業者を対象に定期的な書面調査を実施するなどして、違反行為の発見のために積極的な情報収集に努めている。

 公取委が公表した下請取引の運用状況によると、2022年度は、資本金の額又は出資の総額が1000万円超の親事業者7万名及び当該親事業者と取引のある下請事業者30万名を対象に書面調査を実施。これらを元に新規に着手した下請法違反被疑事件は8267件。事件の端緒別内訳をみると、公取委が親事業者及び下請事業者を対象に行った書面調査によるものが8188件、下請事業者等からの申告によるものが79件だった。

 下請法違反被疑事件の処理件数は8757件であり、このうち8671件(2021年度比745件増加)について、(1)下請法第7条の規定に基づく勧告又は(2)違反行為の改善を求める指導(違反のおそれのある行為に対する指導を含む)の措置を講じている。この措置件数は、1956年の下請法施行以降、過去最多だった2020年度の8111件を上回っている。勧告件数は6件で、全てが製造委託等に係るものだった。

 指導件数は8665件で、これは、1956年の下請法施行以降、最多となっている。指導件数 8665件のうち5305件が製造委託等に係るもの、3360件が役務委託等に係るものだった。また、措置件数8671件を業種別にみると、「製造業」(3211件、37.0%)が最も多く、「卸売業,小売業」(1716件、19.8%)、「情報通信業」(1123件、13.0%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(811件、9.4%)がこれに続いている。

 勧告又は指導を行った件数を下請法違反行為の類型別にみると全体で1万4629件となり、そのうち、親事業者の禁止行為を定めた「実体規定に係る違反」が7098件(構成比48.5%)、発注書面の交付義務等を定めた「手続規定に係る違反」が6697件(同45.8%)となっている。実体規定違反の内訳は、「支払遅延」が4069件(同57.3%)、「減額」が1273件(同17.9%)、「買いたたき」が913件(同12.9%)だった。

 なお、2022年度においては、下請事業者が被った不利益について、親事業者180名(2021年度187名)から、下請事業者6294名(同5625名)に対し、下請代金の減額分の返還等、総額11億3465万円(同5億5995万円)相当の原状回復が行われている。

 この件は

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2023/may/230530.html