東京商工リサーチが発表した「2022年度全上場企業の不適切な会計・経理の開示企業調査」結果によると、同年度(4~3月)に「不適切な会計・経理」を開示した上場企業は、55社(前年度比1.8%増)、件数は56件(同1.8%増)で、2年連続で社数、件数が前年度を上回った。2008年度に集計を開始以降、2019年度の74社、78件をピークに、2020年度の48社、50件まで減少したが、再び増勢をたどっている。
2022年度に不適切会計を開示した上場企業55社のうち、ルーデン・ホールディングス(株)(グロース)は2件開示した。同社は、2022年11月30日付で「外部調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」を開示。2023年1月17日付の「過年度の有価証券報告書等及び決算短信等の訂正に関するお知らせ」等で、2018年4月以降に開示した複数の適時開示資料の内容の訂正を行った。
これらは上場規則に違反して不適正な開示が行われたもので、同社の内部管理体制等について改善の必要性が高いとして、東京証券取引所は同社株式を特設注意市場銘柄に指定した。併せて、株主及び投資者の信頼を毀損したとして2000万円の上場契約違約金の支払いを求めた。上場企業は国内市場の成熟に伴い、海外市場へ事業展開を進めているが、海外子会社や関係会社で不適切会計の開示に追い込まれた企業が多かった。
内容別では、最多は経理や会計処理ミスなどの「誤り」で29件(構成比51.8%)。次いで、子会社・関係会社の役員、従業員の着服横領が14件(同25.0%)。「架空売上の計上」や「水増し発注」などの「粉飾」は13件(同23.2%)だった。精密機器メーカーの(株)東京衡機(スタンダード)は2023年3月30日、東証から特設注意市場銘柄の指定及び上場契約違約金1440万円の徴求を受けた。
発生当事者別では、最多は「会社」の23社(構成比41.8%)。「会社」では会計処理手続きなどの誤りが目立った。「子会社・関係会社」の16社(同29.0%)では売上原価の過少計上や架空取引など、見せかけの売上増や利益捻出のための不正経理が目立った。次いで、「従業員」の14社(同25.4%)、「役員」の2社(同3.6%)だった。「会社」と「子会社・関係会社」を合わせると39社で、全体の7割(同70.9%)を占めた。
産業別では、「製造業」の13社(構成比23.6%)が最も多かった。製造業は、国内外の子会社、関連会社による製造や販売管理の体制不備に起因するものが多い。「運輸・情報通信業」の10社(同18.1%)では、子会社の不適切会計による「粉飾」、子会社社員や役員の「着服横領」などのケースが目立った。「建設業」、「不動産業」の各7社(同12.7%)でも子会社による粉飾や社員の着服横領が多かった。
同調査結果は