内閣府は、「景気ウォッチャー調査のキーワードからみた直近の景況感について」と題した今週の指標を公表した。これは、「景気ウォッチャー調査」が、各回答者のコメントに現れた特徴的な単語(「キーワード」という)を、その回答者の景況感DIを対応させ、全体を通覧することにより、景況感を左右する要因を把握できることが特長となっていることから、こうしたアプローチを中心に、直近の景況感について分析したもの。
2023 年3月の結果では、「現状判断DI」(3ヵ月前と比較しての景気の現状に対する判断DI)が53.3、先行き判断DI(2~3ヵ月先の景気の先行きに対する判断DI)が54.1と、ともに50を上回る水準になるなど、基調として景況感が改善している姿となった。こうした全体のDIとは別に、各回答者のコメントに現れた特定の単語(キーワード)に着目し、その単語を用いた回答者グループのみでDIを算出する(コメントDI)。
まず、「マスク」だ。現状判断に関するコメントにこのキーワードを用いたコメント数は前月から増加(2月調査:13件→3月調査:83件)。また、コメントDIが69.0と、全回答者のDIの53.3に対して大幅に高くなっており、「マスク」が示す要因が、全体のDIの押上げに寄与していた。こうした背景には、3月13日からマスクの着用が任意となるなか、外出への意欲が高まり、昼間・夜間の人流回復が進んだことが影響したとみられる。
また、「インバウンド」、「旅行」、「観光」も3月のキーワード。コメントDIは、前月同様に高水準で推移しており、全体のDIの改善に引き続き寄与している。こうした要因による景況感の押上げの一方、物価上昇による景況感の押下げは継続している。3月調査において、「価」または「値上」というキーワードを含むコメント数は359件(全体の29.4%)、コメントDIも45.8と全体のDIを下回っている。
したがって、物価上昇は景況感の押下げに寄与。具体的なコメント内容でも、百貨店や家電量販店等で物価高による来客数の減少に言及するコメントが多く見られた。しかし、「価」または「値上」を含むコメント数・DIを時系列でみると、コメント数は低下傾向、DIは改善傾向にあり、景気ウォッチャーのコメントからは警戒感が若干和らいできている様子もうかがえ、GWに向け、旅行需要やインバウンドへの期待感が高まっている。
また、先行きでは「賃上」を含むコメント数が1月と比較すると増加、DIも改善しており、前向きな文脈で使用される頻度も増加。ただし、「地方」や「中小」といったキーワードを伴った場合にはマイナス要因として用いられる傾向もみられる。景況感の改善継続には、物価上昇による下押しを克服することが必要であり、賃上げの拡がりが重要になってくる。こうした視点も含め、引き続き景気ウォッチャーのコメント内容に注目していきたい。
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