事業所得者等の有する商品、店舗、事務所等の資産が災害により被害を受けた場合に、その被災に伴い損失や費用が生じたときには、その損失や費用の額は損金の額に算入される。2023年度お税制改正においては、事業所得者等の有する棚卸資産や事業用資産等につき特定非常災害の指定を受けた災害により生じた損失(「特定被災事業用資産の損失」)について、新たに一定のものの繰越期間が5年(現行:3年)に延長された。
具体的には、(1)青色申告者でその有する事業用資産等(土地等を除く)のうちに特定被災事業用資産の損失額の占める割合が10%以上のものは、被災事業用資産の損失による純損失を含むその年分の純損失の総額、(2)青色申告者以外の者は、同じく特定被災事業用資産の損失額の占める割合が10%以上のものは、その年に発生した被災事業用資産の損失による純損失と変動所得に係る損失による純損失との合計額。
さらに、(3)上記(1)及び(2)以外の者は、特定被災事業用資産の損失による純損失の金額、の(1)から(3)の繰越期間が3年から5年に延長された。一方、個人の有する住宅や家財等につき特定非常災害の指定を受けた災害により生じた損失については、雑損控除を適用してその年分の総所得金額等から控除しても控除しきれない損失額についての繰越期間が5年(現行:3年)に延長された。
ちなみに、「特定非常災害」とは、内閣府によると、「著しく異常かつ激甚な非常災害」と法律で定められている。具体的には、(1)死者、行方不明者、負傷者、避難者等の多数発生、(2)住宅の倒壊等の多数発生、(3)交通や水道、電気、ガスなどの広範囲にわたる途絶、(4)地域全体の日常業務や業務環境の破壊、の4つの要件に基づき、総合的に判断した上で、指定される。指定されると、被災者の生活再建のため、行政上の特例措置が適用される。
例えば、運転免許証の更新時期が過ぎても有効期間を延長、債務超過に陥った場合、一定期間、破産手続きが開始されずに済む、家族が亡くなった場合、財産を相続するかどうかを決める期間を延長、などの措置がとられる。これまで特定非常災害に指定された災害は、阪神・淡路大震災(1995年)、新潟県中越地震(2004年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)、西日本豪雨(2018年)、台風19号(2019年)、令和2年7月豪雨がある。