帝国データバンクが発表した「価格転嫁の成功理由に関する企業アンケート調査」結果(有効回答数1335社)によると、自社の商品・サービスについて多少なりとも価格転嫁ができた理由(複数回答)は、コスト上昇の程度や採算ラインなど「原価を示した価格交渉」が 45.1%と最も高くなった。以下、「取引先への価格改定の通知」(28.7%)、「業界全体における理解の進展」(25.8%)、などが上位に並んだ。
企業からは「他社との差別化を進める機会と捉えている。実際に、差別化による恩恵を感じている」(園芸サービス)といった声が挙がっている。また、「2022年に施行された『酒類の公正な取引に関するルールの改正』がプラスに働いており、値上げされた仕入価格に加え、適正な販管費及び利益をのせて卸すということが、業界全体に浸透しつつある」(酒類卸売)というように、業界におけるルールを価格転嫁の成功理由とした企業もみられた。
他方、すべてを転嫁することは難しく、「原材料のメーカーが寡占状態で、有無を言わさず値上げしてきている。一方で、販売先からは値上げを拒まれ、半分程度しか転嫁できていない」(各種機械・同部分品製造修理)などの実情が浮かび上がった。また、業界別では、「製造」において「原価を示した価格交渉」が63.7%と他の業界より高くなった。他方、「小売」では、原価を示した価格交渉は難しく2割程度にとどまった。
2023年における自社の商品・サービスの値上げ予定(実績含む:複数回答)については、多くの企業で年度はじめでもある「4月」が42.8%で最高となった。4月に値上げを実施する予定の企業からは「販売組合で値上げのお願い文書を作成し、4月から値上げを実施する」(砕石製造)や「幼稚園から高校までの給食の比率が高いため、年度単位の値上げに集中する傾向」(料理品小売)といった声が聞かれた。
次いで、「1月」(28.1%)、「5月」(26.5%)、「3月」(20.6%)、「2月」(20.2%)が2割台で続いた。2023年通年でみると、1月~5月に値上げが集中していることがうかがえる。主な業界別にみると、「製造」、「卸売」、「小売」はいずれも「4月」が最高となっている。とりわけ「小売」においては、「4月」の値上げが6割を超えており、突出して高い結果となった。
同調査結果は