商工中金が発表した「中小企業の賃上げの動向調査(2022年11月商工中金景況調査トピックス調査分)」結果(有効回答数2284社)によると、2022年は約7割の中小企業が、全体・一部の従業員の定例給与・時給を引き上げ、賞与・一時金についても過半数が引上げを実施した。2023年も、調査時点(昨年11月~12月)で既に過半数の企業が全体・一部の従業員の定例給与・時給の引上げを予定している。
業種別では、コストアップ分の製品価格への転嫁が比較的順調な鉄・非鉄等で「引上げ」の回答率が高い一方、転嫁の難しさを訴える運輸業、印刷業、情報通信業で低い。飲食・宿泊では特に「一部従業員のみ引上げ」の割合が高い。引上げ対象としては、最低賃金の上昇もあって、若年層やパート・アルバイトといった相対的に賃金の低い層の底上げを行った旨の回答が多かった。
一定の前提をおいて試算した定例給与・時給の平均引上げ率は、2021年の1.31%から2022年に1.95%に上昇。2023年も1.98%と約2%の伸びを維持する見通し(ただし、調査時点では2割超が方針未定)。また、業種別にみると、製造業では、鉄・非鉄や金属製品で2022年に定例給与・時給の大幅引上げがみられる。一方、印刷業では、据置き・引下げ先の多さが目立つ(2022年も46.5%の先が賃上げを実施していない)。
非製造業では、2021年には36.5%の先しか賃上げを実施できなかった飲食・宿泊業において、2022年に賃上げの動きが一気に広がっている(5%以上の賃上げ先も17.5%)。建設業は9割近くが2022年に賃上げ実施の一方、運輸業は約4割の先が賃上げできていない。また、定例給与・時給の引上げ理由は、2022年・2023年とも、「従業員モチベーション」(22年78.3%、23年81.5%)、「人材確保」(同51.1%、55.3%)が上位となった。
2022年は調査時点で最低賃金が引上げ済だったこともあり、「最低賃金等への対応」(39.9%)が3番目に多い。2023年は「最低賃金等への対応」、「業績改善」が前年比やや減少する一方、「モチベーション」、「人材確保」、「物価上昇」は増加した。一方、引上げを見送る理由では、2022年・2023年とも「景気見通しが不透明」(22年58.9%、23年62.2%)、「自社の業績悪化」(同43.9%、38.3%)「雇用維持を優先」(同27.5%、27.3%)が上位。
同調査結果は
https://www.shokochukin.co.jp/report/data/assets/pdf/230125.pdf