業績好調な中小企業がDXを推進も、人材不足が深刻

 帝国データバンクが発表した「業績好調な中小企業のDX取組み動向調査」結果によると、調査に回答した2期連続増収増益の中小企業834社のうち、DXに「取り組んでおり、成果が出ている」という企業は21.6%だった。「取り組んでいるが、はっきりとした成果はまだ出ていない」という企業は30.7%。合わせて 52.3%と約半数の企業が、何らかの形でDXに取り組んでいる結果となった。

 DXに取り組んでいる企業 436 社において、最も成果が出ているのは「業務効率化・生産性向上」で、「成果が出ている」(22.0%)と「やや成果が出ている」(47.0%)を合わせた割合は69.0%に達した。次いで多かったのは「コスト削減」で、「成果が出ている」と「やや成果が出ている」を合わせた割合は 50.7%だった。現時点では、業務の一部をデジタル化し効率化を実現する「デジタイゼーション」が取組みの中心になっている。

 DXへの取組み有無にかかわらず、DXを推進する上での課題・障害となっているもの(複数回答)は、「対応できる人材が不足」が54.1%で最多、「既存システムからの移行が難しい」(24.7%)が続いた。DX人材の不足とレガシー(技術基盤が古い)システム問題、とりわけ前者が、中小企業DXの大きな阻害要因となっている。「具体的に何をしたらよいのかわからない」(21.1%)という回答も約2割を占めた。

 DXが成果を上げるために重要だと考える要素(複数回答)としては、最も多数を占めたのは、「適切な人材の存在」(35.8%)。一方で、「経営層のDXに関する知見や熱意」(35.1%)や「適切なDX戦略の策定」(32.8%)を挙げる企業も、同程度の割合を占めた。DXは「デジタル技術を活用した事業の変革」であるため、経営者の理解・関与のもとで企業戦略として実行されることが重要となっている。

 有効活用しているデジタルツールとしては、「オンラインミーティングツール」、「グループウェア・チャット」といったコミュニケーションツールが挙げられ、コロナ禍により非接触・遠隔コミュニケーションの必要性が高まったこともあり、それぞれ 81.7%、67.7%の企業が有効活用している。間接部門のデジタル化は比較的早期に進んだことから、「会計システム」(67.7%)、「労務管理・給与計算」(60.3%)も、有効活用している企業割合が高い。

 しかし、「受発注システム」(39.2%)、「電子決済・稟議」(37.8%)の活用にはやや遅れがみられる。受発注業務ではサプライチェーン内で EDI(電子データ交換)などを活用している企業がある一方、FAXやメール添付ファイルで受発注書をやり取りしている企業もまだ多い。電子決済・稟議も「ハンコ文化」を覆すには至っておらず、日本特有の取引慣行がデジタル化の足かせとなっている。

 同調査結果は

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p230102.pdf