海外取引調査で1件平均2116万円の申告漏れを把握

 国税庁は、経済社会の国際化への適切な対応のため、海外投資を行っている個人や海外資産を保有する個人などに対し、積極的に調査を実施している。同庁は、2017事務年度に海外投資者等を対象に前年度比46.8%増の4616件の実地調査を実施し、同80.6%増の総額約977億円の申告漏れ所得を把握した。1件平均では同23.0%増の2166万円で、この金額は、実地調査(特別・一般調査)全体での1件平均1021万円の約2.1倍にのぼる。

 海外投資調査4616件を取引区分別にみると、「海外投資」(預貯金等の海外での蓄財を含む海外の不動産や証券などに対する投資)が全体の34.4%を占める1587件、「輸出入」(事業での売上や原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引)が同12.0%の553件、「役務提供」(工事請負やプログラム設計など海外において行う、労力・技術等の第三者に対するサービスの提供)が同9.1%の420件となっている。

 そのほか、海外で支払いを受ける給与や贈与(親族に対する海外送金等)など海外取引に係るもので上記の取引に該当しない「その他」が全体の44.5%を占める2056件だった。これらの海外取引調査の結果、1件当たりの申告漏れ所得が平均で2116万円見つかったわけだが、取引区分別では、「海外投資」で3320万円、「輸出入」で1053万円、「役務提供」で1477万円、「その他」で1603万円が、それぞれ1件当たりの平均となる。

 事例では、いわゆる民泊事業者を調査したものがある。会社員Cは、例年、給与所得と少額(又は赤字)の不動産所得を申告していたが、部内資料等から、「民泊」による収入を得ていることが想定された。調査に着手した結果、Cは、複数の自己所有物件や賃貸物件を国外の民泊仲介業者のインターネットサイトにアップして宿泊者を募集。宿泊料は同仲介業者を通じて得ていたが、申告していない事実を把握したため、課税した。

 なお、民泊に供していた物件について、顧問税理士には、民泊による年間収入金額よりも過少になるような賃貸契約書を偽造し提示することで、民泊に係る申告を免れ、少額(又は赤字)の不動産所得を申告していたことも判明した。Cに対しては、所得税5年分に係る申告漏れ所得金額約2600万円について、追徴税額(重加算税含む)約700万円が課税されている。