東京商工リサーチがこのほど発表した2018年1~11月の美容室の倒産状況によると、同期間の「美容室」の倒産は86件(前年同期比34.3%増)と、2017年の1.3倍増で推移している。すでに11月の段階で、前年1年間の倒産件数72件を上回り、2008年以降の10年で最多だった2011年の91件を塗り替える勢いで推移している。負債総額は29億1600万円(同9.6%増)で、前年同期を上回った。
資本金別では、「個人企業」が48件(前年同期比118.1%増)と倍増し、「個人企業」が全体の過半数(構成比55.8%)を占めた。このほか、「100万円以上500万円未満」が21件(同12.5%減)、「500万円以上1千万円未満」が9件(同28.5%増)と続く。「1億円以上」は発生なし(前年ゼロ)だった。また、従業員別では5人未満が77件(同42.5%増、構成比89.5%)と約9割に達し、小規模・零細企業の倒産が多いことを示した。
原因別では、「販売不振」(業績不振)が78件で最多。全体に占める構成比は90.6%で、同業他社との過当競争を浮き彫りにした。形態別では、事業消滅型の破産が79件と全体の91.8%を占め、業績不振に陥った事業者では、事業再生が難しいことを示した。地区別では、全国9地区のうち四国を除く8地区で倒産が発生。最多は「近畿」の33件、次いで「関東」20件、「中部」16件、「九州」6件、「中国」、「北海道」、「北陸」各3件と続いた。
美容室は、開業での店舗建物、設備・備品などの設備投資が比較的小さいことから、新規参入が比較的容易なため、オーバーストア(店舗過剰)を招きやすい体質があると指摘されている。厚生労働省の「衛生行政報告例」によれば、美容室(美容所)数は2008年度に22万1394施設だったが、2017年度は24万7578施設に達し、この10年で2万6184施設(11.8%)増加している。
大手7社の国内コンビニエンスストアの店舗数が5万5564店(日本フランチャイズチェーン協会調べ、2018年10月時点)と比べて約4.5倍に相当し、その多さが実感できる。美容室市場は、このオーバーストアを背景に、クーポン割引、ポイントカード等の多用などによる過当競争が厳しさを増し、ここへきて経営体力を消耗して息切れする事業者が多くなっているとみられる。
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