22年後継者不在率、5年連続で低下し初の60%割れ

 日本企業の「後継者問題」が急速に改善へと向かっている。帝国データバンクが発表した「全国企業後継者不在率動向2022年調査」結果によると、後継者が「いない・未定」とした企業が 15.4万社にのぼった。この結果、全国の後継者不在率は57.2%となり、コロナ前の2019年からは8.0ポイント、2021年からも4.3ポイント低下し、5年連続で不在率が低下。また、調査を開始した2011年以降、後継者不在率は初めて60%を下回った。

 2020年の後継者策定動向をみると、前年に比べて50~60歳の「現役世代」を中心とした動きが目立った。「50代」では前年から4.5ポイント低下の65.7%で、2年ぶりに70%を下回った。「60代」でも、前年から4.8ポイント低下の42.6%にとどまり、前年からの低下幅は全年代で最大となるほか、全国・全業種で最も後継者不在率が高かった2017年からの低下幅(10.5ポイント)も全年代で大きかった。

 コロナ禍という未曽有の危機のなかで、コロナ関連融資の借り入れも含め、自社事業の将来性に改めて向き合った中小企業は多いとされる。こうしたなか、地域金融機関をはじめ事業承継の相談窓口が全国に普及したほか、第三者へのM&Aや事業譲渡、ファンドを経由した経営再建併用の事業承継など、プル・プッシュ型を問わず事業承継メニューが全国的に整ったことも、後継者問題解決・改善の前進に大きく寄与した。

 業種別では、全業種で前年を下回り、かつ不在率70%を下回った。全業種で不在率が70%を下回るのは2021年に続き2年連続となり、全業種で過去最低を更新した。2022年の不在率が高いのは「建設業」(63.4%)となったものの、最も高かった2017年(71.2%)からは 7.8ポイント低下した。「製造業」(49.2%)は2011年の調査以降初めてとなる 50%割れとなり、その他を除く全7業種で最も低い水準となった。

 先代経営者との関係性(就任経緯別)をみると、2022年の事業承継は「同族承継」により引き継いだ割合が34.0%に達し、全項目中最も高かった。しかし、前年からは4.7ポイントの低下となり、親族間の事業承継割合は急減。一方、血縁関係によらない役員などを登用した「内部昇格」が33.9%で、前年から2.5ポイント増加した。また、買収や出向を中心にした「M&Aほか」の割合が20.3%と、調査開始以降で初めて20%を超えた。

 後継者属性をみると、最多は「非同族」の 36.1%で、前年を2.9ポイント上回った。2011年の調査以降、後継者候補は「子供」の割合が最も高い状態が続いてきたものの、初めて「非同族」が首位となった。「子供」の割合は35.6%で、前年から4.8ポイント低下。同族承継でも、「子供」の割合が大きく低下、代わって「非同族」の割合が高まっており、ファミリー企業でも「非同族」への事業承継=脱ファミリー化へ舵を切る動きが強まっている。

 同調査結果は

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p221105.pdf