木材自給率は2年連続で4割維持もわずかに低下

 農林中金総合研究所が発表したレポートによると、2021年の木材需給表が22年9月末に公表され、2020年に先送りされた住宅需要が顕在化したほか、燃料材需要が一段と拡大したことを受けて、木材需要量は、過去10年で2番目に多かった。一方、木材自給率は、2年連続で4割を維持したものの、燃料材自給率の低下により、11年連続の上昇とはならなかったことが分かった。

 21年の木材需要量は8213万㎥で、過去10年でみると、18年の8248万㎥に次いで高い水準だった。この内訳は、製材用材が2584万㎥、パルプ・チップ用材が2753万㎥、燃料材が1474万㎥、合板用材が1006万㎥、その他用材が47万㎥。木質バイオマス発電所の稼働数増加による需要拡大により、燃料材需要量は増加した。この増減率を20年比で計算すると、木材需要量は10.3%増で、20年の需要低迷から回復したことが分かる。

 ただし、COVID-19が拡大する前の19年比で増減率を計算すると、木材需要量は0.3%増で、内訳は、パルプ・チップ用材が3.5ポイント減、製材用材が1.9ポイント減、合板用材が0.3ポイント減と、用材需要量はコロナ禍以前の水準を回復できていない。一方で、燃料材は20年比で2.6ポイント増、19年比で5.3ポイント増と、木質バイオマス発電所の稼働開始に対応した需要増が継続している。

 2021年の木材自給率は41.1%と2年連続での4割超だったが、20年からは0.7ポイント低下。主な低下要因は、燃料材の輸入量増加によるもの。実際、燃料材自給率は63.4%と20年から6.3ポイント低下し、14年以降で2番目に低かった。一方で、ウッドショックによって急減した用材輸入量がコロナ禍以前の水準に回復しきれていないなか、国内の用材供給量が一段と増加したため、用材自給率は35.9%となり、11年連続で上昇した。

 ロシアによるウクライナ侵攻は、日本の木材輸入量の減少や輸入材価格の高騰を招き、輸入材から国産材への転換等を通じて用材自給率の上昇や素材生産量の増加をもたらしているが、侵攻の長期化を踏まえれば、用材自給率はもう一段と上昇するとみる。しかし、国内の住宅需要をみると、緊急事態宣言等で先送りされていた住宅着工の受注残が概ね解消し、住宅資材・設備価格の高騰を受けて、注文住宅を中心に着工戸数が減少し続けている。

 このため、以前に比べ製材や合板需要が伸び悩むことは避けられない。また、製材・合板工場における生産能力は近年ほとんど変わっておらず、乾燥能力を中心に、国内の用材加工能力に限界もみえつつある。レポートは、「こうした理由から、国産材丸太の供給拡大が原木価格の下押し圧力になることも考えられるため、国産材の需要先確保に加え工場の生産能力増強が急務」との考えを示している。

 レポートの全文は

https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/nri2211re3.pdf