企業の借入金利0.97%で初の1%割れ、14年連続低下

 日本銀行による量的緩和、マイナス金利政策の継続により企業の平均借入金利は低水準で推移している。企業の資金需要低迷に伴う貸出競争の激化で、「利ざや」が減少する地域金融機関では、将来を見据えた再編も見受けられるほか、足元では新型コロナ関連融資で企業への貸出しが大幅に増加、その出口戦略も注視されている。そこで、帝国データバンクは「全国平均借入金動向調査」を実施した。

 同調査は、同社が保有する企業財務データベース「COSMOSU1」(93万社・730万期)を用いて、2006年度~2021年度の国内企業の平均借入金利を算出し、集計・分析したもの。借入金利は、有利子負債(銀行等、保険、ノンバンク、個人借入等を含む借入金、社債、CP等を含む総額)に対する支払利息の割合。調査結果によると、2021 年度の企業の平均借入金利は0.97%となり、前年度から0.13ポイント低下した。

 借入金利は、2007年度(2.33%)をピークに14年連続で低下。例年0.10ポイント前後の低下で推移してきたが、2020年度には0.26ポイントの大きな下げ幅を記録している。同年度には新型コロナ関連融資が本格的に開始され、実質無利子無担保での融資が急拡大。利息負担のない借入金の増加で企業が支払う借入利息が減少、借入金利の大幅低下の要因となったとみられる。

 都道府県別にみると、最も平均借入金利が低かったのは「奈良県」の0.67%。以下、「香川県」(0.68%)、「富山県」(0.79%)と続いた。新型コロナの影響が拡大以前の2019 年度と比べると、全ての都道府県で低下した。マイナス金利政策が続く国内ではあるが、10年物国債の利回り(長期金利)は米国の金利上昇に伴い、上振れ状態が続く。現状では金利は低く抑えられているものの、中長期的には金利政策次第で変動する可能性がある。

 また、新型コロナ関連融資の返済が来年春頃から本格化するとみられる中で、利子補給期間が終了し、利払いが発生する企業も出てくることが想定される。このため2023年度からは借入金利が上昇に転じる可能性が高い。急激な利率上昇はもちろん、コロナ関連融資の利息支払い負担の増加は過剰債務・営業不振に直面する企業にとっては、大きなダメージとなりかねない。来年度以降の動向には一層の注視が必要としている。 

 同調査結果は

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p221009.pdf