国税不服審が2021年10月~12月分の裁決事例を公表

 国税不服審判所はこのほど、2021年10月から12月分の裁決事例を同審判所ホームページ上にある「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」に追加し公表した。今回公表された裁決事例は、4事例(所得税法関係3件、相続税法関係1件)と少なめだった。今回は、3事例において全部取消し又は一部取消など、納税者の主張の何らかが認められており、実務家にとっても参考となると思われる。

 ここでは、相続税法関係において、評価対象地は、相続開始日において、土壌汚染のある土地と認められ、当該評価対象地の評価に当たり、浄化・改善費用相当額を控除すべきとした事例を紹介する。同事例は、法令等により土壌汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じていない評価対象地について、相続開始日において、土壌汚染対策法所定の基準を超える特定有害物質を地中に含有していたことが認められた。

 そこで、土壌汚染のある土地と認めるのが相当であるとして、その評価対象地の評価に当たり、浄化・改善費用相当額を控除すべきとした事例。原処分庁は、評価対象地は法令等により土壌汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じておらず、本件各土地の価格形成に影響を及ぼすような土壌汚染は認められないから、本件各土地の評価に当たり、土壌汚染がないものとした場合の評価額から浄化・改善費用相当額を控除する必要はない旨主張した。

 しかし裁決は、本件各土地は、相続開始日において、土壌汚染対策法所定の基準を超える特定有害物質を地中に含有していたことが認められ、土壌汚染のある土地と認めるのが相当なことから、本件各土地の評価に当たり、浄化・改善費用相当額を控除すべきと指摘。そして、本件各土地及びその周辺の状況や土壌汚染の状況から、本件各土地について最有効使用ができる最も合理的な土壌汚染の除去等の措置は掘削除去と認められるとも指摘した。

 したがって、請求人が主張する土壌汚染対策工事の各見積額の算定過程に特段不合理な点は見当たらず、浄化・改善費用の金額として相当であると認められるので、本件各土地の評価に当たり、土壌汚染がないものとした場合の評価額から、浄化・改善費用相当額として本件各見積額の80%相当額を控除して評価するのが相当と判断。相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を全部取り消している。

 2021年10月から12月分の裁決事例は↓https://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/125.html