金融庁はこのほど、全国銀行協会など金融機関4団体に対し、相続の開始を「期限の利益喪失事由」とするカードローン契約の規定の削除を協会会員宛てに周知徹底するよう要請した。期限の利益について、民法では、「期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する」と定めている。具体的には、借りた金は返済日までに返済すればよく、それまでは全額返済しなくてもよいという規定である。
期限の利益が喪失すると、例えば、住宅ローンのように借入金を分割返済していた場合、返済日を待たずに一括返済しなければならなくなる。民法上、喪失事由と定めているのは、債務者の破産や提供していた担保の滅失など限定的なため、例えば、返済が何ヵ月にも亘って滞った場合などには対応できず債権者の権利が脅かされることから、当事者同士の契約で期限の利益が喪失となる一定のルールを定めているのが一般的。
金融機関のカードローン契約に、「相続の開始」が、期限の利益喪失事由として規定されていると、カードローン契約者が亡くなった場合、相続人が被相続人の債務の全額を直ちに一括で返済することになる。ただし、これでは債務の金額によっては、相続人の負担が大きいことから、以前から消費者団体が金融機関に対して、「相続の開始」を利益喪失事由から削除するよう求める申し入れを行っている。
本年5月末現在すでに26件で協議が調い、順次規定を削除する対応が進められている状況。要請は、これを踏まえ、傘下の金融機関に対しカードローン等の提供を行う場合には、顧客本位の観点から規定の検証に取り組むよう依頼するもの。要請内容は、まず、相続の開始を理由に、期限の利益を失ったとして、相続人に対して被相続人の債務の全額を直ちに一括で返済するよう求めない方針を明確化し、顧客に周知すること。
次に、方針の明確化及び顧客周知の具体的方法については、カードローン等貸付けに係る規定に、相続の開始を期限の利益喪失事由とする旨規定されている場合においては、当該規定の削除等を行い顧客に周知すること、の2つとなっている。