日本経済新聞社がまとめた2022年上期(1~6月)の日経MJヒット商品番付によると、東の横綱には、歴史的な値上げが相次ぐ食品や日用品などで低価格商品が売れた「値上げ消費」が選ばれた。価格据え置きを宣言したプライベートブランド(PB)やディスカウント店が消費者の節約志向をとらえて売上を伸ばした。西の横綱は新型コロナウイルス禍で抑えられてきた旅行意欲が再燃する「リベンジ旅行」だった。
「リベンジ旅行」は、日常で積み重ねた節約や我慢を旅行で発散させるメリハリ消費の傾向が強まっている。不安定な国際情勢を受け、食品や日用品は値上げラッシュが続く。4月の物価上昇率は7年1ヵ月ぶりに2%台に達した。消費者の生活防衛意識が高まり、価格据え置きを宣言したイオンや西友など大手スーパーのPBがシェアを伸ばした。「ドン・キホーテ」や神戸物産が展開する「業務スーパー」などディスカウント店も支持を集めた。
大創産業(広島県東広島市)やセリアなど100円ショップ運営会社が相次いで東京・銀座に進出し、「銀座100円ショップ」として話題となった。値上げ前の高級品の駆込み需要も発生した。都内の一部百貨店では5月の高級時計ブランドの売上がインバウンド(訪日外国人)による追い風があった19年同月を上回った。値上げが発表され、駆込みで購入する人が増えたとみられる。
消費者に自粛を強いてきた行動制限は、ワクチン接種の促進や感染状況を踏まえて解除された。我慢してきた反動は「リベンジ旅行」に向かう。JTBはゴールデンウイーク期間の国内旅行者数は21年比7割増となる1600万人と推計。海外旅行の需要も高まっている。コロナ禍の健康志向でノンアルコール飲料の市場が急拡大。20~30歳代を中心に、あえてアルコールを飲まない「ソバーキュリアス」というノンアル生活が支持されている。
日本コカ・コーラやサントリーワインインターナショナルが投入したノンアル飲料はいずれも販売好調だった。また、リアルでの関わりが減ったなか、台頭したのがデジタル空間上の交流だ。インターネット上に構築された仮想空間「メタバース」は海外勢が先行し、三越伊勢丹など日本でも参入する小売りやサービス企業が増えてきている。