国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税については、経過措置がある。「事業者向け電気通信利用役務の提供」等の特定課税仕入れを行った国内事業者は、特定課税仕入れについて、申告・納税の義務が課されるとともに、その特定課税仕入れについて、仕入税額控除の対象とすることができる。特定課税仕入れとは、国内において国外事業者から受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供」及び「特定役務の提供」をいう。
しかし、一般課税で申告を行う事業者においては、その課税期間における課税売上割合が95パーセント以上である事業者、その課税期間について簡易課税制度が適用される事業者については、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとされる。したがって、これら事業者は、特定課税仕入れを行ったとしても、その課税期間の消費税の確定申告については、特定課税仕入れについて申告等に含める必要はない。
以上が、仕入を行った事業者が、国外事業者に代わって申告課税を行う方式、リバースチャージ方式に関する経過措置だ。これら事業者は特定課税仕入れがなかったものとされるので、特定課税仕入れに係る申告納税義務もなく、また、仕入税額控除のみ行うこともできない。免税事業者は、消費税の確定申告等を行う必要がないので、特定課税仕入れを行ったとしても申告等を行う必要はない。
また、国外事業者が2015年3月31日までに締結した電気通信利用役務の提供で、2015年10月1日前から同日以後引き続き行う電気通信利用役務の提供については、改正前の消費税法が適用される、継続的電気通信利用役務の提供を行っていた場合の経過措置がある。この経過措置が適用される事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた国内事業者は「特定課税仕入れ」として、リバースチャージ方式による申告・納税を行う必要はない。
例えば、データ保存等を行うクラウドサービスについて、2015年3月31日までに、2015年4月1日から2016年3月31日までの1年間の利用契約を締結していた場合などは、改正前の内外判定基準等が適用される。なお、契約内容等の変更が行われた場合には、経過措置は適用されない。月ごとに更新・自動継続するものなど、月ごとに役務の提供を了している、または、月ごとに契約更新していると認められるものは、経過措置の対象とはならない。