21年度に不適切な会計・経理を開示した企業は54社

 東京商工リサーチの調査・集計によると、2021年度(4~3月)に「不適切な会計・経理」を開示した上場企業は、54社(前年度比12.5%増)、件数は55件(同10.0%増)だった。アジャイルメディア・ネットワーク(株)(マザーズ)は、2件開示した。2008年に集計を開始以降、2019年度の74社、78件をピークに2020年度は48社、50件と減少したが、2021年度は2年ぶりに社数、件数ともに前年度を上回った。

 内容別では、最多は経理や会計処理ミスなどの「誤り」で26件(構成比47.3%)。次いで、「架空売上の計上」や「水増し発注」などの「粉飾」が16件(同29.1%)だった。(株)エイチ・アイ・エス(東証1部)は連結子会社でのGoToトラベル事業の給付金の不正受給問題が発覚。2021年10月期決算で不適切な取引の会計処理の修正を行った。また、子会社・関係会社の役員、従業員の着服横領は13件(同23.6%)だった。

 発生当事者別では、最多は「会社」の24社(構成比44.4%)。「会社」では会計処理手続きなどの誤りが目立った。「子会社・関係会社」の17社(同31.4%)では売上原価の過少計上や架空取引など、見せかけの売上増や利益捻出のための不正経理が目立った。次いで、「従業員」の10社(同18.5%)、「役員」の3社(同5.5%)だった。「会社」と「子会社・関係会社」を合わせると41社で、全体の約8割弱(同75.9%)を占めた。

 市場別では、「東証1部」が25社(構成比46.2%)で最多、次いで、「ジャスダック」が11社、「東証2部」が10社と続く。2013年度までは新興市場が目立ったが、2015年度以降は国内外に子会社や関連会社を多く展開する東証1部の増加が目立つようになった。また、産業別では、「製造業」の20社(同37.0%)が最も多かった。製造業は、国内外の子会社、関連会社による製造や販売管理の体制不備に起因するものが多い。

 企業のグローバル化に伴い、海外子会社との取引に関する不適切会計も増加し、国内子会社での不適切会計も相次いだ。また、現場や状況を無視した売上目標の達成へのプレッシャーで、不正会計に走るケースが依然として多い。東証は2022年4月、新市場区分に移行した。上場各社はこれまで以上にコンプライアンスやコーポレートガバナンスの意識定着に向けた組織づくりが求められる。

 同調査結果は↓https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220427_02.html