100円ショップは、消費者の根強い節約志向と、コスパの高いアイテムへの支持を背景に市場が伸びている。帝国データバンクが発表した「100円ショップ業界動向調査」結果によると、大手5社を中心とした国内100円ショップ市場(事業者売上高ベース)は、2021年度は前年から約500億円(5.8%)増加の9500億円となる見込みだ。当初は前年同月の売上水準を下回る店舗も一部みられ、コロナ禍の巣ごもり特需から反動減も懸念された。
ただ、引き続き衛生用品などで底堅い需要が確保できたことに加え、独自商品や高機能商品など付加価値を高めた100円以外の価格帯の商品導入が各社で進み、他商品の販売減をカバーできたケースがみられた。近年はインターネットやコンビニ店舗など販売チャネルの多様化も進むほか、クオリティやデザインの見直し、最新のトレンドや細かな需要変化を捉えた新商品の投入など、価格以外の商品訴求力も大幅に向上している。
このペースで推移すると、早ければ2022年度にも市場規模が1兆円を突破する可能性がある。また、積極的な店舗展開も業績を押し上げる要因となった。大手4社の店舗数を調査したところ、コロナ前の2019年度末時点で7687店だったのに対し、2022年2月末時点では約8400店(6.4%増)と、2年間で約800店舗増加。各社とも年間100店超の新規出店を続けており、早ければ2025年度にも1万店を突破するとみられる。
100円ショップの一人当たり購買額を推定すると、2021年度(1月まで)は平均で月間635円(前年比35円増)と推計される。10年前の2011年度は390円だったが、12年度に400円、その5年後の17年度には500円を突破。さらにその3年後には600円を上回り、10年で1.6倍に増加。総務省の家計消費状況調査によれば、食器やタオルなどの家事雑貨、ティッシュなどの衛生消耗品の21年度消費は前年に比べやや減少傾向で推移した。
2021年度の家計消費は、コロナ禍初年となった2020年度のような巣ごもり需要は落ちつきを見せている。ただ、積極的な店舗展開や販売チャネルの多様化で消費者の利用機会が増えているほか、アウトドア用品など日用雑貨以外の商品ラインナップが拡充されたことで顧客層が広がったこと、「150~200円などミドルプライスの購入が増えている」など客単価の上昇も追い風となっている。