コロナ禍で家計の消費行動は大きく変化。感染拡大防止のために自宅で過ごす時間が増えたため、ネットショッピングなどデジタル技術を活用した消費(消費のデジタル化)が急速に進んでいる。そしてコロナ禍が長期化する中で、デジタル化への流れは一時的なものから不可逆的なものへと変化しつつある。信金中央金庫では、こうしたデジタル化の進展によって消費がどのように変化してきたのかを商品別・年齢階級別に分けて考察している。
それによると、コロナ禍の外出自粛や自宅待機の影響を受けて、個人消費は一時、過去に例を見ないほどの大きな落込みを記録。もっとも、その後は上向きへと転じ、直近21年10~12月期の実質個人消費はコロナ前の水準にかなり近づいている。一方で、個人消費の構造はコロナ禍で大きく変化。顕著なのが消費のデジタル化で、ネットショップ利用世帯の割合や支出額は、緊急事態宣言が初めて発令された20年4月を境に大きく伸びている。
商品別にみると「出前」がコロナ後に最も伸びており、外食の代わりとして利用する人が増えたことが数値に表れている。支出額では「食料品」が大きく増えており、これまで近隣のスーパーで購入したものをネット経由での購入に切り替える動きが進んだとみられる。年齢階級別にみると、シニア世帯で消費のデジタル化が急速に進んでいる。水準こそ低いものの、コロナ前と比べると利用世帯の割合・支出額ともに急拡大している。
シニア世帯はその世帯数の多さゆえに、ネットショッピングの支出総額に占める割合が高く、なかでも「保健・医療」や「贈答品」で存在感を示している。また、支出額では「食料品」が主要商品の中で最も多く、ネットショッピングの中で最大の市場を形成している。ネットショッピング利用世帯の割合が100%となった場合の市場規模を試算すると、21年の支出額から2倍近くに拡大する余地があることが分かった。
特に、シニア世帯はすべての主要商品で市場規模と拡大余地が他の年代を上回り、潜在需要は大きい。今後はこれら需要をどのように取り込んでいくのかが重要になる。シニア世帯は消費のデジタル化と親和性が高く、またコロナ禍で貯蓄を大きく増やしている可能性がある。売り手側である企業は、商品・サービスの質向上や価格競争力を高めるとともに、シニア世帯の潜在需要を引き出すようなサポート体制を充実することが求められよう。
同調査結果は↓https://www.scbri.jp/PDFnaigaikeizai/scb792021y09.pdf