東京商工リサーチの調査によると、2021年に倒産した企業の平均寿命は23.8年(前年23.3年)で、3年ぶりに前年を上回った。全倒産に占める構成比は、業歴30年以上の“老舗”企業が33.8%と、前年から1.3ポイント上昇。一方、同10年未満の“新興”企業は26.5%で、前年より0.9ポイントダウンし、差は7.3ポイントに拡大した。調査は、2021年に倒産した6030件のうち、業歴が判明した5121件を対象に分析したもの。
倒産に占める“老舗”の構成比は2年連続で上昇した。“老舗”企業は、事業基盤を確立し、金融機関との関係も密接だ。しかし、過去の成功体験に固執し、急激な外部環境への対応が乏しくなりやすい。また、代表者が高齢の場合、生産性向上への投資に消極的な企業も多く、事業承継や後継者問題は遅れがちだ。こうした事情を背景に、倒産だけでなく休廃業を決断するケースも増えている。
2019年は深刻な人手不足で倒産が増加。20年は新型コロナ感染拡大で経営環境が激変したが、相次ぐ支援策で倒産は急減した。ただ、資金余力が乏しく、創業間もない小・零細企業の淘汰は避けられず平均寿命は短縮した。21年は、コロナ禍の資金繰り支援で倒産は歴史的な低水準となった。老舗企業にもコロナ関連の支援策は広がったが、代表者の高齢化や後継者不在で事業を断念するケースが増加。老舗企業の倒産が平均寿命を押し上げた。
産業別では、10産業のうち、製造業、卸売業、不動産業、情報通信業、サービス業他の5産業で平均寿命が延びた。平均寿命の最長は、「製造業」の36.3年で、前年より2.9年延び、2年ぶりに前年を上回った。以下、「卸売業」28.6年、「不動産業」24.5年、「運輸業」24.1年、「小売業」23.1年の順。平均寿命が最も短いのは、「金融・保険業」と「情報通信業」の15.7年だった。
2021年の“老舗”企業倒産の構成比を都道府県別でみると、トップは「高知県」の64.7%。次いで、「山口県」60.5%、「愛媛県」56.5%と西日本が続く。全国平均の33.8%以上は30府県(前年全国平均32.5%、35道県)だった。一方、“老舗”企業の構成比の最低は、「佐賀県」の13.6%で、“新興”企業の構成比は40.9%と4番目に高い。事業基盤が脆弱な新興企業が、新型コロナ感染拡大で急激に業績悪化に陥り、大きな影響を及ぼしたようだ。
同調査結果は↓https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220225_01.html