紙・板紙市場は増加見込みも本格回復には至らず

 矢野経済研究所が発表した「紙・板紙市場に関する調査」結果によると、日本製紙連合会資料による2020年(1月~12月)の紙・板紙の製紙メーカー出荷量(国内出荷+輸出)は、前年比▲8.2%減の2309万トンとなった。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、経済活動が停滞、紙・板紙の各品種は軒並み近年にはない減少幅となっており、出荷量はリーマン・ショックの影響を受けた2009年以来の大幅減少となった。

 段ボール原紙は、国内出荷量は低迷も、輸出量の急拡大によりプラス成長となったため、2020年は板紙の出荷量構成比が初めて紙の出荷量構成比を上回った。コロナ禍において、需要構造の変動が加速。王子グループを除く主要洋紙メーカーでは、2022年1月出荷分より、印刷・情報用紙、白板紙等の値上げを発表。またレンゴー、大王製紙、日本製紙においては、2022年2月出荷分より段ボール原紙やクラフト紙等の値上げを発表している。

 これは、昨今の原燃料価格や物流費の高騰により、生産コストを自助努力では吸収できなくなったことによる。特に洋紙メーカーにおける、需要が先細る中での生産コスト上昇は、先々の状況を視野に入れると看過できなかったとみられる。今回の発表は、各メーカーの需要の先行きに対する危機感の表れや、2050年を期限とした脱炭素化という重要課題が浮上したことも大きい。厳しい市場環境の中で、新価格が市場に浸透するか、注目される。

 2021年の紙・板紙の製紙メーカー出荷量(国内出荷+輸出)は、前年比2.6%増の2369万トン程度となる見込み。日本経済の持ち直しとともに需要は回復しつつあるなか、前年、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって大幅減となった紙・板紙の出荷量は増加する見通し。しかし一方で、コロナ禍前の2019年と比較すると、国内出荷量については全品種において、2019年の出荷量を下回る見込みだ。

​ 2022年の紙・板紙の製紙メーカー出荷量は、前年比3.2%増の2445万トンと予測。板紙については、白板紙は微減から横ばい基調で推移するとみられるも、段ボール原紙は大規模な天候不順等がなければ、世界的な需要の高まりに引っ張られる形で、増加推移すると予測。一方、情報媒体としての紙は、本格的な経済回復に後押しされ、増加で推移するとみられるも、その増加幅は小幅にとどまり、出荷量はコロナ禍前の水準には戻らないと予測する。

 同調査結果は↓

https://www.yano.co.jp/press/press.php/002926