経団連、在職老齢年金制度は将来的に「廃止すべき」

 経団連は、2025年の次期年金制度改正に向けた基本的見解を発表し、年齢に関わりなく高齢者が就労できる環境整備、働き方に中立な制度の構築などに向け、在職老齢年金は将来的に廃止すべきとの見解を示した。2025年改正では年金財政への影響も懸念されることから、対象者の縮小にとどめ、2030年改正で制度の効果等を検証した上で、廃止に向けて本格的に検討すべきだとの見解を示した。

 政府は年金制度を5年に1回見直しており、2024年末にかけて2025年改正の中身を本格的に議論する。在職老齢年金制度は、賃金と厚生年金の合計額が月50万円を超えると、支給額がカットされる仕組みだ。これに該当しないように労働時間を押さえる「働き控え」を招いているとの見方がある。在職老齢年金廃止の財政影響は、2030年度5200億円、2040年度6400億円、2060年度4900億円と見込まれている。

 標準報酬月額の上限を引き上げる場合は、合理性のあるルールを設け、予見可能性を高める必要があり、段階的引上げなど経過措置を講じるべき。高所得者の負担増による貢献が、将来の厚生年金受給者全体の給付増につながることを踏まえ、私的年金制度の拡充をあわせて行う必要がある。標準報酬の上限を現行の65万円から75万円とした場合、上限該当者は168万人(該当者割合4.0%)、追加的な保険料負担が4300億円(労使折半)となる。

 一方、私的年金制度の拠出限度額は、厚生年金加入者の中でも、加入状況によって異なる。老後の所得確保に柔軟に取り組みやすく、かつ制度の予見可能性を確保する観点から、企業型DCの拠出限度額の引上げ、特別法人税の撤廃を実現すべきだ。高齢社員の活躍推進に向けて定年の引上げを選択する企業が増加する中、判定基準の見直し、もしくは変更手続きの柔軟化を行うべきだ。

 なお、女性の就業促進に向けた取組みとして、現状では、多様な生活実態・家族状況を背景に、第3号被保険者の約4割程度が非就業となっている。「年収の壁」を超えて働くことによるメリットを積極的に広報、啓発し、女性が働き続けられる様々な取組みを加速する。年金制度では、適用拡大を確実に進め、第3号被保険者を縮小し、これらの進捗を踏まえ、第3号被保険者制度の在り方を検討・再構築すべきだとした。

 「次期年金制度改正に向けた基本的見解」の概要は

https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/064_gaiyo.pdf