国税不服審判所はこのほど、2024年1月から3月分の裁決事例を同審判所ホームページ上にある「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」に追加し公表した。今回公表された裁決事例は、10事例(国税通則法関係3件、所得税法関係1件、法人税法関係2件、相続税法関係2件、国税徴収法関係2件)だが、今回は、2事例の賦課決定処分を全部取消しまたは一部取消しをしており、実務家にとっても参考となると思われる。
ここでは、保険金を支払通知日の属する事業年度の収益に計上した請求人の会計処理を正当と判断した法人税法関係の事例を紹介する。裁決は、2021年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、及び2021年1月1日から同年12月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分の全てを全部取消している。
この事例は、審査請求人が受領した死亡保険金について、原処分庁が、被保険者の死亡日の属する事業年度の益金の額に算入すべきであるとして法人税等の更正処分等をしたのに対し、請求人が、その死亡保険金は保険会社からの支払通知日の属する事業年度の益金の額に算入すべきであり、請求人の処理は是認されるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
原処分庁は、請求人の前代表者を被保険者とした生命保険契約において、前代表者の死因は保険契約に係る保険金の支払事由に該当し、免責事由のいずれにも該当しないことからすると、請求人は、前代表者の死亡日において、保険金に係る保険金請求権の実現可能性を客観的に認識でき、その行使が可能となったといえるから、請求人が受領した死亡保険金の額は、前代表者の死亡日の属する事業年度の益金の額に算入すべきである旨主張した。
しかし裁決は、保険金は、保険会社の確認調査等の結果次第では支払われないこともあり得たこと、請求人が恣意的に保険金の額の収益計上時期を繰り延べようと企図した事実は認められないことを踏まえれば、保険金の額を支払通知日の属する事業年度の雑収入に計上した請求人の会計処理は、取引の経済的実態からみて合理的な収益計上の基準に則したものであり、法人税法上も正当なものとして是認すべきと認められると判断した。
本件更正処分はその全部を取り消すべきであり、これに基づき、請求人の2021年12月課税事業年度の課税標準法人税額及び納付すべき税額を計算すると、「確定申告」欄と同額となるから、更正処分はその全部が違法であって取り消すべきである。更正処分及び2021年12月課税事業年度の地方法人税の更正処分は、いずれもその全部を取り消すべきであるから、各賦課決定処分は、いずれもその全部が違法であって取り消すべきであるとした。
2024年1月から3月分の裁決事例は