まだまだ税収増が止まらない、存在感増す相続税

 第一生命経済研究所は、財務省が3日に公表した2023年度の一般会計決算概要見込みを分析したレポートを発表した。それによると、決算概要見込では、23年度の税収は72.1兆円と22年度(71.1兆円)を上回り、過去最高を更新した。前年度からの増加幅は+0.9兆円と小さめだが、これはテクニカルな押し下げ要因が複数ある中での増加であり、それを勘案すると、税収の基調はしっかり増加傾向にあるとみている。

 税目別にみると、増加をけん引しているのは法人税(2022年度14.9兆円→23年度15.9兆円)だ。円安などに伴って製造業利益が増加したことが主な背景とみられる。電気・ガス料金は、2023年度以前の資源高の影響で23年度料金の値上げが進んだ一方、23年度の資源価格は22年度と比べて低下。この期ズレの影響が電気ガスセクターの23年度利益の増加につながっており、法人税にもここが影響したとみている。

 そして、今回の隠れた税収増の担い手が相続税だ(3.0兆円→3.6兆円)。前年対比で2割の増加している。相続人の資産額を基準に課税される相続税は、実現益を中心に課税される所得税などに比べて資産価格の影響を受けやすい。2023年度中の株価や地価の上昇が増加要因になったものと考えられる。消費税はほぼ横ばい(23.1兆円→23.1兆円)、所得税は減少(22.5兆円→22.1兆円)した。

 2023年度税収は様々な要因で下押し圧力がかかっている。諸々のテクニカル要因を整理しておくと、まず消費税における輸入消費税の還付がある。日本国内への輸入の際に事業者に消費税を課せられるが、要件を満たせばこれを仕入税額控除の枠組みで事業者が支払う消費税から控除、還付を受けることができる。円安や資源高によって2022年度の輸入消費税が膨らんだ分、2023年度の還付が大きくなる。

 また、法人税と所得税がある。2022年度の連結決算企業のグループ通算制度への移行の影響だ。グループ通算制度への移行で新たに課税事業者となった子会社には2021年度の納税実績がないので、各子会社の2021年度所得をベースに中間納付額を計算することとされた。このため、当初の中間納付額が最終年税額よりも多くなるケースが発生し、還付が膨らんだようだ。還付は23年度に生じ、法人税収減の要因となる。

 なお、税収上振れの2.5兆円や歳出における不用額、公債金の削減などを考慮した決算における純剰余金0.9兆円は秋の補正予算で処理される見込み。半額が国債整理基金(国債償還の資金)、もう半額が防衛力強化資金(防衛費財源)に充てられるとみている。純剰余金 0.9兆円は防衛費財源として想定されていた年額(1.4兆円)より小さいが、昨年の純剰余金が多額だったこともあり、財源不足などの問題には発展しないとみている。

 レポートの全文は

https://www.dlri.co.jp/files/macro/347910.pdf