人手不足倒産が過去最多ペース、「2024年問題」直撃

 帝国データバンクが発表した「人手不足倒産の動向調査」結果によると、2024年上半期(1~6月)の人手不足倒産は182件に達し、前年同期の110件から大幅に増加した。統計として遡れる2013 年以降の最多件数を2期連続で更新するなど、深刻な現状が浮き彫りとなった。特に「従業員10人未満」の小規模事業者の人手不足倒産は全体(182件)の約8割にあたる143件(前年同期84件)にのぼった。

 今年5月の労働力調査(厚生労働省)によると、就業者数は6766万人となり22ヵ月連続で前年同月を上回り増加傾向が続くなど、足元では人手不足感は高水準ながらも低下に転じる兆しがみえる。一方で、転職等希望者は1000万人を超え過去最多を更新するなど、労働市場の流動化が加速している。従業員数の少ない小規模事業者では、退職者が出ればダメージは大きく、事業継続の断念につながるケースが増えそうだ。

 時間外労働の上限規制が強化された、いわゆる「2024年問題」が本格化してから、3ヵ月が経過した。「2024年問題」は建設業・物流業を直撃し、既に人手不足による倒産の増加が顕著となっている。人手が増やせず業務効率化も難しい状況が長期化すれば業績への影響は避けられず、企業にとっては大きな痛手となり、生き残りは難しい局面を迎えることになるだろう。

 特にトラックドライバーの時間外労働上限規制や改善基準告示が改正された「物流業」の人手不足倒産は27件で、前年同期(15件)からほぼ倍増し、年上半期としては過去最多だった。多くの産業が関わるバリューチェーンのなかで基盤となる物流業に支障が生じれば、対応に追われる必要性も増してくる。実際に、2024年問題に際して物流面の対応を行う企業は62.7%にのぼった(「2024年問題に対する企業の意識調査」)。

 具体的な対応策も多岐にわたり、「運送費の値上げ(受け入れ)」(43.3%)や「スケジュールの見直し」(36.3%)などが上位となっている。自社の人手不足に関してだけでなく、企業を取り巻くあらゆるステークホルダーの状況把握にも注意が必要となる。