請求人の会計処理が公正処理基準に適合するとした裁決

 一括払された金型等相当額を24ヵ月にわたり収益計上した請求人の会計処理を巡って争われた事件で、国税不服審判所は、公正処理基準に適合するとして、原処分を全部取り消した。一括払された金型等相当額について、その全額を請求人が受領した日の属する事業年度の益金の額に算入すべきとしてされた更正処分に対し、金型等相当額の負担に係る契約の法的性質等からすれば、請求人の会計処理は公正処理基準に適合すると判断したもの。

 原処分庁は、請求人が、発注者から24回の月額均等分割払で受領し、部品の量産開始日を含む月から24ヵ月に分割して毎月月末に収益に計上していた、請求人が所有権を有する金型等の製作費用相当額について、契約の変更により一括で受領しており、請求人が受領した時点で請求人の管理支配下に置かれ所得が実現したとして、金型等相当額を受領した日の属する事業年度において、全額を益金の額に算入すべき旨主張した。

 しかし裁決は、金型等相当額の負担に係る請求人と発注者との契約の法的性質等からすれば、請求人が受領した金型等相当額は、請求人から発注者に対し、継続的に日々提供される役務に応じて、1ヵ月単位で対価が支払われる約定に基づき、各月末日の経過ごとに、24回にわたり、過去1ヵ月分の役務への対価として代金が確定し、その支払期日を翌月とする発注者と請求人との間の契約に基づき支払われるものと認められると指摘。

 さらに、金型等相当額の支払に関する基本契約書の条項が変更されていないことから、請求人が、部品の量産開始日を含む月から24回にわたり、毎月末日に収益に計上した会計処理は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(公正処理基準)に適合するものであり、一括で受領した金型等相当額の全額を受領した日の属する事業年度の益金の額に算入すべきとは認められないと判断して、原処分庁の更正処分を全て取り消している。

(2023年12月21日裁決)