5月時点の企業の想定為替レートは平均140円88銭

 円安が止まらない。円安の継続は、輸入価格の上昇を通じて企業のコスト増加の一因となる一方で、輸出企業を中心に大幅な円安を背景に過去最高益を計上した企業も多い。企業が業績の見通し等を作成する際にあらかじめ想定した名目為替レートと、実際の為替レートに大きな乖離が生じた場合、その乖離が企業の事業遂行に影響を与えるほか、業績を大きく左右する。とりわけ、中小企業の想定為替レートは企業の与信にも影響を与える。

 帝国データバンクが全国の企業を対象に5月20日~30日に実施した「企業の想定為替レートに関する動向調査」結果(有効回答数1万1410社)によると、2024年5月時点での企業の想定為替レートは、平均1ドル=140.88円(以下、1米ドル当たりの円レートを示す)となった。前年4月の127.61円から13円27銭安と大幅な円安水準を想定していた。中央値は145円、最頻値は150円だった。

 想定為替レートの分布をみると、企業の24.7%が「146~150円」を想定し、最も割合が高かった。また、「136~140円」、「141~145円」、「151~155円」、「156円~」がいずれも 10%台となっており、130円台後半以上を想定する企業が7割を超えている。また、業界別に想定為替レートをみると、『農・林・水産』や『卸売』、『製造』、『金融』が140円台を想定している一方で、『不動産』は130円台前半とみている。

 さらに、輸出・輸入別に想定為替レートをみると、事業として直接または間接的に「輸出」を行っている企業では143.11円となった。他方、「輸入」を行っている企業では144.56円だった。輸入企業は輸出企業より1.45円程度円安の水準を想定している。特に、「直接輸入のみ」(145.89円)を行っている企業は、「直接輸出のみ」(141.98円)を行っている企業よりも3.91円円安の水準を想定していた。

 2024年には、名目為替レートは年初から半年で約10円も円安が進み、最近では150円台後半で推移している。企業が適正と考える為替レートは1ドル=110円台から120円台とされる(帝国データバンク「円安に関する企業の影響アンケート(2024年5月)」2024年5月17日発表)。そのため、引き続き実勢レートとの乖離による輸入物価を通じた企業収益の悪化を招くリスクに注視する必要があるとみている。

 同調査結果は

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p240607.pdf