「2024年問題」の影響、「マイナス」55.3%と半数超

 東京商工リサーチが発表した「『2024年問題』に関するアンケート調査」結果(有効回答数5099社)によると、2024年4月、建設業や運輸業などで時間外労働の上限規制が適用されたが、この「2024年問題」が経営に「マイナス」の影響と回答した企業は55.3%と半数を超えた。前回調査(2023年10月)の61.9%から6.6ポイント改善したが、依然として企業経営に影響を及ぼしていることが分かった。

 規模別では、「マイナス」が、大企業62.9%(前回68.0%)、中小企業54.4%(同60.9%)といずれも前回から改善した。産業別では、「マイナス」と回答したトップは、「卸売業」の65.8%。各産業をつなぎ、円滑な流通システムの構築を担う「卸売業」は、配送コスト上昇への対応や納品スケジュールの見直しを懸念する声が多い。次いで、「建設業」64.1%、「製造業」60.7%、「運輸業」60.4%が続いた。

 一方、「マイナス」の構成比を前回調査と比較すると、「農・林・漁・鉱業」を除く9産業で低下。規制適用前の前回は、影響が不透明なこともあり「マイナス」影響を危惧する企業が多かったが、適用後は影響が見えてきたことで不安感が薄れた企業が多いようだ。「運輸業」は、前回調査で「マイナス」回答率が72.7%に達していたが、今回調査では12.2ポイント低下し、荷主や元請業者との交渉や社内体制が整い始めた可能性がある。

 産業を細分化した業種別では、「マイナス」回答の最高は、「パルプ・紙・紙加工品製造業」の85.7%(前回2位)。前回1位の「食料品製造業」は75.0%で4位に下がった。国土交通省によれば、30分以上の荷待ち時間の件数が多い輸送品目として、加工食品、建設資材、紙・パルプが挙げられ、これらを取り扱う業者へ向け、2020年春にガイドラインが策定されたが、まだ環境整備が十分に進んでいない可能性を示唆している。

 「2024年問題」によるマイナスの影響では、「物流・建設コスト増加による利益率の悪化」が71.4%と、前回に引き続きトップ。原材料や燃料費アップ、人手不足などの対応に苦慮するなか、「2024年問題」で運賃や作業費などのコストが上昇傾向にあり、さらなる業績悪化を懸念する企業が多い。次いで、「稼働率の低下による納期の見直し」が22.8%で続き、稼働率の低下で納品スケジュールに支障が出ることを懸念する企業が多い。

 特に「建設業」が36.3%と回答率が高かった。「建設業」では、「物流・建設コスト増加による利益率の悪化」が56.6%で最も高い。次いで、「稼働率の低下による利益率の悪化」が44.2%で続き、残業規制によって収益悪化を懸念する企業が多かった。「運輸業」では、「稼働率の低下による利益率の悪化」が50.7%で最も高く、全産業、建設業と同様に利益率を懸念する企業が多い。

 同調査結果は

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198679_1527.html