「GC注記」、「重要事象」記載の上場企業は75社

 東京商工リサーチが発表した「上場企業の継続企業の前提に関する注記調査」結果によると、2024年3月期本決算を発表した上場企業約2300社のうち、決算短信で「継続企業の前提に関する注記(GC注記)を記載したのは23社(前年同期25社)だった。また、GC注記に至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」は52社(同56社)だった。

 GC注記と重要事象を記載した企業数は合計75社で、コロナ禍以降で最多だった2022年3月期本決算94社から19社減少し、GC・重要事象の記載企業は減少傾向が続いた。2023年5月の新型コロナ5類移行から1年が経過。この間、経済活動の本格再開やインバウンド需要回復の追い風を受け、消費やサービス関連の業種を中心に業績回復が広がった。このため、GC注記・重要事象の要因にコロナ禍の影響を挙げた企業の減少が顕著となった。

 一方で、中堅メーカーなどを中心に業績悪化から初めて重要事象を記載するケースが目立った。原燃料や人件費などのコストアップが重くのしかかるなか、販売先への価格転嫁が進まず、赤字や営業キャッシュ・フローのマイナスが継続する不振企業も少なくない。なお、GC注記企業23社のうち、中間決算ではGC注記を記載していなかったが、3月期本決算で記載した企業は5社だった。

 いずれもこれまで重要事象の記載にとどまっていたが、経営悪化の度合いが増し、本決算ではGC注記を記載している。中間決算でGC注記を記載していた自動車内装品製造の河西工業(株)は、海外連結子会社の決算作業の未了を理由に5月30日現在、2024年3月期決算発表を延期している。また、前期本決算でGC注記を記載していた元東証スタンダードの(株)プロルート丸光は2023年12月に大阪地裁に会社更生法を申請した。

 GC注記・重要事象を記載した75社を理由別に分類したところ、65社(構成比86.6%)が重要・継続的な売上減や損失計上、営業キャッシュ・フローのマイナスなどの「本業不振」を理由としている。原燃料価格や人件費などの上昇によるコスト増が深刻化し、採算性が悪化した企業が目立った。次いで、「資金繰り悪化・調達難」が11社(同14.6%)で、手元資金の流動性に不安を抱える企業が多い。

 このほか、取引金融機関からの資金調達にあたって「財務制限条項に抵触」しているケースが9社(構成比12.0%)と続く。債務超過に転落したのは3社だった(一部、個別決算含む)。債務超過は上場廃止基準にも抵触するため、利益確保や増資などによる早急な資本増強策が求められる。

 同調査結果は

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198612_1527.html