東京商工リサーチが発表した「2023年度全上場企業の不適切な会計・経理の開示企業調査」結果によると、同年度に「不適切な会計・経理」を開示した上場企業は、58社(前年度比5.4%増)、件数は62件(同10.7%増)で、3年連続で社数、件数が前年を上回った。2008年度に集計を開始以降、2019年度の74社、78件をピークに、2020年度は48社、50件まで減少したが、緩やかながら3年連続で増勢に転じている。
内容別では、最多は経理や会計処理ミスなどの「誤り」で30件(構成比48.4%)と全体のほぼ半数を占めた。次いで、子会社・関係会社の役員、従業員の「着服横領」が21件(同33.9%)と約3社に1社だった。「会社資金の私的流用」など、個人の不祥事も監査法人は厳格に監査している。「架空売上の計上」や「水増し発注」などの「粉飾」は11件(同17.7%)だった。
証券取引等監視委員会は2024年1月23日、ITbookホールディングス(株)(東証グロース)が金融商品取引法の開示規制に違反したとして、1億929万円の課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告。金融庁は同年3月15日、同社に課徴金納付を命じた。上場企業は2021年度までは海外子会社や関係会社で不適切会計の開示が多かったが、2023年度は国内外連結子会社などの役員や従業員による着服横領が目立った。
発生当事者別では、最多は「会社」の26社(構成比44.8%)。「会社」では会計処理手続きなどの誤りが目立った。次いで、「子会社・関係会社」は17社(同29.3%)で、売上原価の過少計上や架空取引など、見せかけの売上増や利益捻出のための不正経理が目立った。「従業員」は13社(同22.4%)で、外注費の水増し発注を行った上で、その一部をキックバックし私的流用するなどの着服横領が多かった。
市場別では、「東証プライム」が27社(構成比46.5%)で最多。次いで、「東証スタンダード」が18社、「東証グロース」が11社と続く。また業種別では、「サービス業」の15社(同25.8%)が最多。サービス業は、従業員の不適切取引などによる「着服横領」や連結子会社での過大請求などの「誤り」が増えた。次いで「製造業」の12社。いずれも国内外の子会社、関連会社による製造や販売管理の体制不備に起因するものが多かった。
上場会社は、会計監査を担う監査法人が付かなければ上場廃止となってしまう。上場会社は監査法人との関係性が重要になっているが、一方で監査を請け負う顧客1社への報酬依存度が15%を超える状態が5年続くと、翌年からその企業の監査を担当できないルールが2023年5月に導入された。監査法人の交代で不適切会計を見逃してしまうケースも予想されるだけに、監査法人の監査機能がどこまで高まるかも注目される。
同調査結果は