中小企業倒産防止共済制度は、取引先企業が倒産した場合、積み立てた掛金総額の10倍の範囲内(最高8000万円)で回収困難な売掛債権等の額以内の共済金の「貸付け」が受けられ、その掛金は損金(必要経費)算入できるものだが、短期間で解約・再加入を繰り返す節税目的の利用が多いことから、2024年度税制改正において、本年10月以後、一定の場合には掛金の損金算入ができないこととする見直しが行われている。
具体的には、特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例における中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済事業に係る措置について、本年10月1日以後に中小企業倒産防止共済法の共済契約の解除があった後、同法の共済契約を締結した場合には、その解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する共済契約に係る掛金については、同特例の適用ができないこととされた(所得税についても同様)。
同共済制度の加入資格は、製造業、建設業、運輸業等の場合、資本金額3億円以下又は従業員数300人以下、卸売業の場合、資本金額1億円以下又は100人以下、サービス業の場合、資本金額5千万円以下又は、100人以下など。掛金月額は5千円から20万円までの範囲内(5千円刻み)で自由に選べ(掛金総額の積立限度額は800万円)、掛金は増額・減額ができる(減額には事業経営の著しい悪化等の一定の要件が必要)。
また、掛金は会社等の法人の場合は税法上の損金、個人事業の場合は事業所得の必要経費に算入できる。この特例が、2024年10月1日以降に共済契約を解約し、再度共済契約を締結(再加入)する場合には、解除の日から同日以降2年を経過する日までの間に支出する掛金については、損金(法人)、必要経費(個人)算入できないことにされたわけだ。改正の背景には、中小企業倒産防止共済制度の不適切な利用がある。
中小企業庁によると、2011年10月に掛金積立限度額を増額(320万円→800万円)して以降、共済金貸付の発生は減少傾向にあるにもかかわらず、加入が急増。解約手当金の支給率が100%となる、加入後3年目、4年目に解約が多くなるが、近年その傾向が特に顕著になっている。直近では約33%が3年目、4年目に解約する状況で、解約してすぐに再加入する行動変容が発生しており、加入・脱退の増加の一因になっているという。
脱退・再加入は、積立額の変動により貸付可能額も変動することとなり、連鎖倒産への備えが不安定となるため、本来の制度利用に基づく行動ではないと指摘。加入者へのアンケートでは、共済への加入理由として、「税制上の優遇措置があるため」を理由とするものが約3割、うち、税制上の優遇措置のみ目的が約2割となっており、約2割~3割が節税目的による加入と推定されるとして、中企庁は制度の不適切な利用への対応を求めていた。