財務省が公表した「地域企業における賃上げ等の動向についての特別調査」結果(有効回答数1125社)によると、2024年度に「ベア(ベースアップ)」または「定期昇給」を実施する企業の割合は前年度からそれぞれ増加し、ベアで70.7%、定期昇給で81.9%となっており、企業が賃金の底上げを意識していることがうかがえる。ベアを実施する企業について規模別でみると、大企業より中堅・中小企業等の伸び幅が大きくなっている。
このことから、賃金引上げの流れが中堅・中小企業等にも広がっていることがうかがえる。2024年度において、「ベア」の引上げ率を「3%以上」と回答した企業の割合は59.8%と、前年度(36.4%)に比べ23.4ポイントも増加している。「ベアと定期昇給を合わせた賃金」の引上げ率を「5%以上」と回答した企業の割合は36.5%と、前年度(18.9%)に比べ17.6ポイント増加している。
規模別にみると、 2024年度において、「ベア」の引上げ率を「3%以上」と回答した企業の割合は、大企業で68.5%(前年度39.5%)、中堅・中小企業等で52.0%(同33.4%)となり、いずれも前年度に比べ増加。「ベアと定期昇給を合わせた賃金」の引上げ率を「5%以上」と回答した企業の割合は、大企業で53.8%(同26.1%)、中堅・中小企業等で24.4%(同13.4%)となり、いずれも前年度に比べ増加している。
2024年度における賃金引上げを実施する理由(3つまで回答)は、「社員のモチベーション向上、待遇改善、離職防止」(86%)と回答した企業が最多。企業からは、「人材確保や社員の生活環境改善のために引き上げる」などの声が聞かれた。対して、賃金引上げを実施しない理由(同)は、「業績(収益)低迷(見通し含む)」(63.2%)が最多。企業からは、「物価上昇に伴う収益減により、賃上げ原資が確保できない」などの声が聞かれた。
一方、2024年度における非正規職員に対する賃金等の待遇改善の取組み(複数回答)については、 「非正規雇用に対する給与・一時金・手当等の増加」と回答した企業の割合が59.4%で最も高く、次いで「正規雇用への転換推進」(48.3%)となっている。非正規職員に対する賃金等の待遇改善について、何らかの取組みを実施していると回答した企業の割合は、製造業(84.6%)・非製造業(86.1%)ともに8割超となっている。
なお、人件費の価格転嫁については、一定程度以上できたとする大企業は29.8%、中堅・中小企業は32.4%。他方、(十分または全く)できていないとする大企業は44.6%、中堅・中小企業は50.2%となり、引き続き課題となっている。人件費の価格転嫁ができていない理由(3つまで回答)では、「同業他社の動向」(39.8%)が最多、「原材料費の転嫁を優先している」(38.1%)、「取引先からの理解が得られない」(32.8%)が続いた。
同特別調査結果は
https://www.mof.go.jp/about_mof/zaimu/kannai/202401/tokubetsu.pdf