ゼロカーボンシティの実現に向けた自治体アンケート

 矢野経済研究所が発表した「ゼロカーボンシティ(2050年二酸化炭素実質排出量ゼロ)の実現に向けた施策に関する自治体アンケート調査」結果(有効回答数276市区町村)によると、陽光など再生可能エネルギー発電設備と、家庭用・産業用蓄電池の普及拡大施策の実施・検討状況(単数回答)は、前者は8割以上、後者は7割以上が、実施に意欲を示している(「実施中」及び「実施予定・検討中」とした回答の合計)。

 再エネ発電量の増加と引き換えに、元々電力需要の少ないエリアでは送電線の容量不足による系統制約が生じている。この場合、地域内で再エネ発電設備の導入を進めても、つくられた電力を送電線に流す逆潮流が難しい。また、太陽光による発電量が増える晴天時には、余剰電力が多く発生する時間帯があり、電力の需給バランスを一致させるため発電の出力を抑えるケースがある。

 系統制約や出力抑制の回避策として、再エネ発電設備を設置した需要家自らが電力を消費する自家消費を増やす手法が注目されている。そのためには、昼間時に消費しきれなかった余剰電力を蓄電池に貯め、電力需要が高まる夜間などに活用することが有効となる。今回のアンケート結果からは、蓄電池の導入促進で再エネ電力を無駄なく活用し、再エネ発電設備の導入効果を高めたい意向があるものとみられる。

 地域マイクログリッドとは、大規模災害の発生等により停電が発生した際、自立電源への切り替え・供給により地域内の電力インフラを維持するシステム。自立電源として太陽光などの再エネ発電設備や蓄電池を活用することで、平常時には再エネ由来の電力を無駄なく使用する。こうした電力の自給自足の仕組みを構築することにより、レジリエンス向上と脱炭素化の両方を実現できるとみられている。

 しかし、今回のアンケート調査での地域マイクログリッドの構築状況(単数回答)は、構築に前向きな市区町村は2割未満に留まる結果となった。その理由として、再エネ発電設備の設置や蓄電池の設置について、地域住民や施設所有者、及び施設関係者との合意形成が必要であることがある。このほか、系統制約エリアでは既存の送配電網の活用が難しく、新たに自営線を敷設するとしてもその分のコストが必要なことが阻害要因と考えられる。

 2025年4月には、東京都と神奈川県川崎市で新築戸建住宅へ再エネ発電設備の設置を義務付ける条例が施行される。再エネ発電設備の設置義務化条例の制定状況は、制定に前向きな自治体は数%にとどまる。再エネ発電設備の設置には、初期費用の掛からないPPAスキームなどの活用が広がっているものの、その認知はまだ不十分。コスト増につながるとの懸念から、現時点では条例化を躊躇している様子がうかがえる。

 同調査結果は

https://www.yano.co.jp/press/press.php/003443