日本銀行は3月19日の金融政策決定会合において、マイナス金利政策の解除を正式に決定した。政策金利の上昇は約17年ぶりとなる。今後、日銀が金融政策の正常化へと舵を切る場合、2022年度末時点で平均1%を下回った企業の借入金利も、市場金利に連動して緩やかに上昇していくことが見込まれる。今後到来する「金利のある世界」に備えた意識の変革が企業にも強く求められる。
帝国データバンクでは、過去1年間に決算を迎えた企業で長短借入金を含む有利子負債を有する約9万社を対象に、借入金利の上昇に伴う支払利息への負担や、経常利益に与える影響について分析を行った。借入金利の上昇幅は、+0.5%~最大+4.0%を想定して試算。また、決算期末のデータに基づくため、借入金の返済・借換え、追加での借入れによる有利子負債の増減については考慮しないものとした。
この結果、企業の借入金利が0.5%上昇した場合、企業では1社当たり年間平均で136万円の利息負担が新たに発生し、経常利益を平均4.6%押し下げることが分かった。また、追加での利息増により、経常損益が黒字から赤字へと転落する企業は3.8%発生する試算となった。1%まで引き上げられた場合、利息負担は年273万円の増加、赤字へと転落する企業は7.1%と1割に迫った。
借入金利が2%まで上昇する局面を想定した場合は、利息負担は平均で545万円の増加、経常利益は平均で18.2%減少、赤字へと転落する企業は全体の1割を超える計算となった。また、借入金利が4%まで上昇する場合は、利息負担は平均で1090万円の増加、経常利益は平均で36.4%減少、赤字へと転落する企業は全体の2割となる。総じて、価格転嫁が進まず収益力に乏しい中小企業ほど利息負担が大きい傾向が見られた。
帝国データバンクが「マイナス金利撤廃」の議論が本格化する前の昨年1月、金利上昇による事業への影響について1390社を対象に調査した結果、金利上昇により「マイナスの影響が大きい」と回答した企業が40.0%を占めた。足元では、借換えなどの場面において「すでに足元の貸出金利は上がっている」とする金融機関もあり、「マイナスの影響」を実感する企業はさらに増加している可能性がある。