相続税法第34条第1項が規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」の算定を巡って争われた審査請求において、国税不服審判所は、相続等により取得した財産の価額から控除すべき金額は、相続等により財産を取得することに伴って現実に支払義務が生じた金額と解することが相当であるとして、原処分庁の連帯納付義務の納付通知処分を適法とし、審査請求を棄却した。
この事案は、共同相続人の一人に係る滞納相続税を徴収するため、原処分庁が審査請求人に連帯納付義務があるとして連帯納付義務の納付通知処分をしたのに対し、請求人が、納付通知処分は制限納税義務者である請求人に対し連帯納付義務者として非居住無制限納税義務者である共同相続人に課税された相続税の納付を求める違法なものであることなどを理由として、原処分の全部の取消しを求めたものである。
請求人は、原処分庁がした相続税の連帯納付義務の納付通知処分について、連帯納付責任の限度額の算定に当たり、相続等により取得した財産の価額から(1)相続財産の不動産登記を行う場合の司法書士報酬、登録免許税及び印紙税等の各見積額並びに(2)相続税申告等のための税理士報酬及び本件通知処分等に対応するための弁護士報酬の各負担額が控除されていないため違法である旨主張した。
しかし裁決は、相続税法第34条第1項に規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」とは、相続人等が現実に取得した利益に相当する金額であって、現実に支払義務が生じた金額控除後の金額と解するのが相当とし、そして、相続税法基本通達において、「相続等により受けた利益の価額」とは、相続等により取得した財産の価額から、相続税法規定の債務控除の額のほか、相続税額等を控除後の金額をいう旨定めていると指摘。
その上で、(1)相続財産である不動産は、いずれも相続による権利の移転の登記がされていないため、司法書士報酬及び登録免許税等の各見積額は請求人に現実に支払義務が生じたものとは認められず、(2)税理士報酬等は、相続税額のように納税義務に基づいて当然に負担が生じるものではないし、登録免許税額のように一般的に生じるものとも言い難いものであり、本件通達に定める債務控除の額等のいずれにも該当しないと判断した。
これらのことから、請求人の主張する各金額は、連帯納付責任限度額の算定に当たり相続等により取得した財産の価額から控除することはできないとして、請求人の主張はいずれも採用することができず、本件通知処分は、相続税法第34条第6項の規定に基づきされており、本件通知処分は適法であると判断。したがって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとしている。
(令和5年6月21日裁決)