帝国データバンクが発表したコロナ禍前後に見る信用リスク変化の分析によると、コロナ禍や人手不足、物価高の影響を受けた「飲食店」の倒産は768件発生し、過去10年で最も少なかった2022年(452件)から1.7倍に急増したことが分かった。新型コロナの感染拡大に伴う休業や時短営業など経営環境が大幅に悪化し、事業の継続を断念した飲食店が多く発生した2020 年の780件に次ぐ過去2番目の高水準を記録した。
食品スーパーを含む「飲食料品小売」は大規模な値下げや価格据置き、安価なPB商品などで顧客獲得を図る大手スーパーとの競争激化を背景に、客離れにつながりかねない「価格転嫁」が難しい背景もあり、倒産は294件と2022年から69件増加。コロナ禍でネット通販の需要が高まった「運輸業」でも、配送ドライバーの残業増加に対応した人件費や、高騰する燃料価格などのコスト負担が増加、倒産件数は440件と同113件増加した。
足元では、3年連続で借入金利息を営業利益で賄えていないゾンビ企業が、2022年度は推計25万1000社と3年連続で増加しており、倒産予備軍が増えていることが分かる。そこで、コロナ禍の前後で企業の信用状態にどのような変化があるのか、帝国データバンクが保有する信用リスク指標「倒産予測値(今後1年以内に倒産する確率を個別企業ごとに算出したリスク指標)」を用いて傾向を分析した。
2019年~2023年(各年12月時点)における信用リスクのグレード分布から、G(グレード)1~G10 に該当する企業のうち、1年以内に倒産する確率が特に高いG8以上の企業割合に着目して分析。その結果、算出可能な企業145万社におけるG8以上の割合では 2019年:7.8%→2023年:8.7%と0.9ポイントの増加だった。2023年におけるG8以上の構成比を業種別にみると、分析対象の49業種中12業種で20%を超えていた。
2019年と2023年の信用リスクを比較し、特に高リスク企業の割合が上昇した上位3業種は「飲食店」(高リスク企業割合52.3%、2019年比3.2倍)、「飲食料品小売」(同45.5%、同2.9倍)、「運輸業」(同33.3%、同3.0倍)が該当した。いずれも人手不足や原材料価格高騰などの影響を受けている業種であり、2019年と比べるとG8以上の割合は約3倍に増えていることが判明した。
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