9年振り拡大に転じた2022年度の酒類総市場

 矢野経済研究所が発表した「酒類市場に関する調査」結果によると、2022年度の酒類総市場は、メーカー出荷金額ベースで前年度比4.0%増の3兆2350億円と、2013年度以来9年振りに前年度比で拡大した。市場が拡大に転じた主因は業務用需要の回復にある。2022年3月に新型コロナのまん延防止等重点措置が解除され、飲食店の酒類提供制限がなくなって以降、少しずつ客足が戻り、業務用需要の大きいビールなどの消費が拡大した。

 一方で、コロナ禍における巣ごもり需要により拡大してきた家庭用消費は、外出時の飲食機会の増加により減速傾向となった。拡大が続いてきた低アルコール飲料は15年振りに縮小した。また、2023年の酒税法改定で各社が販促を強化してきたビールの反動を受け、相対的に注力度が下がる新ジャンルビールなど家庭用比率が高いカテゴリーは特に苦戦を強いられた。​

 健康志向の高まりから、お酒は飲めるが積極的には飲まないという「ソバーキュリアス」という言葉も注目を集めている。2022年度のノンアルコールビールテイスト飲料(ノンアルビール飲料)の市場規模は、2009年の登場以来、初の縮小に転じたとみるが、コロナ禍で健康志向がより高まったことで、2021年度が前年度比二ケタ増と大きく拡大した反動減として一過性の事象とみられ、市場は依然として拡大基調にあると言える。

​ また、元々ノンアルコール飲料市場はノンアルビール飲料を中心に確立されてきたが、近年はビール風味以外のノンアルコール商品も増加。ノンアルRTD(Ready to Drink:開封してすぐにそのまま飲める飲料)はその代表例で、ビール類から低アルコール飲料へ需要が流れているのと同様に、ノンアルコール飲料においてもノンアルRTDはノンアルビール飲料からの流入の受け皿となって、規模は小さいものの市場は確実に成長している。

  2023年度の酒類総市場は引き続き業務用を中心に回復基調は鮮明になり、加えて夏場の記録的な猛暑がビール類の消費を押し上げるなど追い風もあった。一方で、家庭用では、酒類を含めた度重なる食品の値上げで生活防衛意識が高まり、2022年度同様落ち込むとみるが、ビール減税による消費拡大や価格改定による金額ベースでの上乗せ効果もあり、2023年度の酒類総市場は前年度比0.6%増の3兆2550億円と、前年度を僅かに上回ると見込む。