信金中央金庫は全国中小企業景気動向調査を基に、中小企業の価格転嫁の現状を分析した。それによると、中小企業における仕入価格は、高騰が続いたひと頃に比べ沈静化する動きもみられるが、総体としては資源価格の高騰や円安の影響を受けて高止まりしている。一方で、仕入価格の上昇分を販売価格に転嫁する動きは徐々に進んできているが、業種別にみると価格転嫁の進展具合で業種間での格差がみられる。
中小企業における前期比仕入価格判断DIは、直近の2023年12月期調査で51.1と、2022年12月調査(62.4)をピークに4四半期連続で低下。ただし、いまだに歴史的な高水準であることに変わりはない。一方で、前期比販売価格判断DIは、直近の2023年12月期調査で27.1となった。こちらもピークだった2022年12月調査(29.8)からは低下しているものの、低下幅は仕入価格DIと比較して相対的に小幅にとどまっている。
その結果、販売価格DIから仕入価格DIを差し引いた数値「交易条件指数」は、2022年3月期(▲36.8)を底とし、7四半期連続で改善している。もっとも、2023年12月期でも▲24.0 と、コロナ前の水準よりも低くなっている。業種別に交易条件指数をみると、不動産業、卸売業、小売業ではマイナス幅が比較的小さいのに対し、建設業、サービス業、製造業ではマイナス幅が大きくなっている。
小業種別に交易条件指数をみると、「旅館、その他の宿泊所」や「飲食店」、「自動車整備及び駐車場業」といった主に個人を顧客とする業種や、「衣類・その他の繊維製品製造業」や「出版・印刷・同関連産業」といった国内外で厳しい競争にさらされている業種のマイナス幅が大きくなっている。また、建設業については、「総合工事業」、「設備工事業」、「職別工事業」いずれの内訳でも大幅なマイナスとなっている。
ちなみに、交易条件指数が大幅なマイナスとなっている建設業について主要取引先別にまとめたところ、「官公庁」向けが最も低くなっており価格転嫁が進んでいない。理由としては、売上げ確保のため可能な限り安価で入札を行おうとしている企業が多いことに加え、物価上昇などの際に契約金額を変更できるいわゆる「スライド条項」についても、運用基準が整備されていないことや、適用除外とされるケースが存在することが挙げられる。
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https://www.scbri.jp/reports/newstopics/20240124-post-474.html