国税庁、確定申告時の退職所得加算漏れに注意を喚起

 2023年分所得税等の確定申告開始を前に、国税庁は、退職所得がある者に注意を喚起している。退職所得については、退職金などの支払者に「退職所得の受給に関する申告書」を提出した場合、一般的に、退職所得にかかる所得税等は源泉徴収により課税が済むので、確定申告書の提出は不要だが、医療費控除や寄附金控除を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合には、退職所得の金額も確定申告に含める必要があるとしている。

 この背景には、会計得検査院が昨年11月に公表した2022年度決算検査報告において、国税庁に対して、退職手当等の支払を受けた居住者が所得税の確定申告を行う場合に退職所得の金額を加算した合計所得金額に応じて基礎控除等が適正に適用されているかについて、源泉徴収票データを活用した具体的な申告審理の事務処理手続きを定めるなどして、的確な確認を行うなどするよう改善させたものがある。

 基礎控除は、合計所得金額に応じて、2400万円以下は48万円、2400万円超2450万円以下は32万円、2450万円超2500万円以下は16万円で、2500万円超は0円となる仕組みとなっている。会計検査院は、法人の役員等に係る2020年分又は2021年分の退職所得の源泉徴収票において退職手当等の金額が500万円以上の者のうち、所得税の確定申告を行った役員等3万2843人を選定して検査した。

 その結果、所得税申告書に退職所得の金額を含めずに確定申告していた役員等が対象者の72%(2万3750人:試算した退職所得の金額計2707億2877万余円)見受けられた。また、適用要件を満たさないにもかかわらず基礎控除等の額を計上するなどしていて基礎控除等が適正に適用されていない蓋然性が高い役員等4515人が把握され、その退職所得の金額は993億円と試算された。

 上記退職所得の金額を加算した合計所得金額に応じて基礎控除等を適正に適用した場合に納付すべき所得税等の額の増加見込額は5億3380万円にのぼる。国税庁は、会計検査院の指摘に基づき、退職手当等の支払を受けた役員等の所得税申告書における基礎控除等に係る申告審理を行うに当たって、源泉徴収票データを活用した具体的な事務処理手続きを定め、昨年8月に事務連絡を発して、各国税局等を通じて全国の税務署等に周知した。

 さらに、退職所得がある年分の確定申告を行う場合は所得税申告書に退職所得の金額を含めて申告する必要があることについて、昨年8月及び9月に国税庁のウェブサイト等に明確に記載して、受給者等に対して周知するなどしている。

 会計検査院の指摘は

https://www.jbaudit.go.jp/report/new/all/pdf/fy04_04_04_02.pdf