矢野経済研究所が発表した「文具・事務用品市場に関する調査」結果によると、2022年度の同市場規模は、メーカー出荷金額ベースで前年度比▲0.2%減の3986億4000万円となった。文具・事務用品市場は、2022年度もコロナ禍の影響が残り市場規模は前年度割れとなったが、2020年度、2021年度と比較して行動制限が緩和されたことなどから、緩やかではあるが筆記具などの一部の商品で需要の回復がみられた。
また、原材料費やエネルギーコストをはじめとする諸経費の上昇に伴う商品価格の上方改定も市場規模の底上げに一部寄与した。ただし、在宅勤務・テレワークなど多様な働き方の浸透によるオフィス需要の冷え込みやペーパーレス化のさらなる進行、GIGAスクール構想の推進による学校教育のデジタル化の進展など、当該市場の需要の回復には様々な懸念要素が散見されている。
コロナ禍以降、法人需要は停滞を続けており、文具・事務用品メーカーの多くは個人消費に対応したパーソナルユースの商品展開に重きを置く傾向をこれまで以上に強めている。パーソナルユースの商品は、筆記具をはじめとする主要メーカー各社が2010年代初頭より高機能・高付加価値商品の投入を続けてきた。その結果、中でも近年は、高機能・高価格帯のシャープペンシルの販売状況が好調に推移している。
また、アート&クラフトをはじめとする趣味的な需要や自己表現をするための道具としての文具・事務用品の需要は堅調だ。独自の色調や多彩なカラーバリエーションを有する水性マーカーや水性ボールペン、万年筆用インクなどの需要が高まっている。この流れは、特に文具に対して感度の高い女性層を中心に活発化しており「女子文具」といったカテゴリーが注目されている。
2023年度の文具・事務用品市場規模は、前年度比横ばい推移の3986億5000万円を予測。2023年度は新型コロナでの行動制限撤廃による需要の回復に加え、訪日外国人観光客のインバウンド需要の回復などを受けて、市場は前年度比プラス成長を予測。ただし、紙製品市場はペーパーレス化の進行や学童人口の減少などを受けて引き続き厳しい事業環境での推移が考えられ、文具・事務用品全体市場としては前年度比横ばい推移を予測する。
同調査結果は