2024年度税制改正の柱の一つは、物価高に負けない構造的・持続的な賃上げの動きをより多くの国民に拡げ、効果を深めるため、賃上げ促進税制を強化することだ。全法人向けの措置について見直した上で、その適用期限を3年延長する。見直しは、原則の税額控除率を10%(現行15%)に引き下げ、税額控除率の上乗せ措置を、前年度から給与総額を4%以上増やしたら税額控除率に5%を加算する。
その増加割合が5%以上の場合は10%、7%以上の場合は15%をそれぞれ加算する。この結果、賃上げのけん引役として期待される常時使用する従業員数2000人超の大企業については、継続雇用者の給与等支給額の増加に応じた控除率の上乗せについて、さらに高い賃上げ率の要件が創設され、従来の3%以上、4%以上に加え、5%以上、さらには7%以上の枠が設けられ、賃上げを促していく。
税額控除率の上乗せ措置には、従来からある教育訓練費の実施に対するものがある。教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が 10%以上であり、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合は、税額控除率に5%を加算する。これに加えて、女性活躍、子育て環境整備の要件であるプラチナくるみん認定又はプラチナえるぼし認定を受けている場合には、税額控除率に5%を加算する措置が創設される。
また、従業員数が2000人以下の中堅企業は、前年度からの給与総額の増加割合が3%以上の場合は税額控除率に10%を、4%以上の場合は15%をそれぞれ加算する措置を設ける。これに加え、教育訓練費の増加割合が10%以上の場合の税額控除率5%の加算と子育て環境整備等の要件の認定を受けている場合の5%の加算があり、大企業と同様に、最大35%が控除できるようになる(控除税額は当期の法人税額の20%が上限)。
中小企業の場合は、新たに5年間の繰越控除制度を創設し、これまで制度を利用できなかった赤字企業に対しても賃上げにチャレンジする後押しをする。賃上げに伴う税額控除は、給与総額を1.5%以上増やせば増加分の15%を、2.5%以上増やせば30%をそれぞれ控除する。また、教育訓練費に係る上乗せ措置は増加割合が5%以上であれば10%加算する。この結果、子育てに係る5%加算を加えれば、最大45%が控除できるようになる。