販売業を営む審査請求人が、特定の仕入先からの仕入金額を損金の額に算入していたところ、原処分庁が、その仕入先に対する仕入金額は時価相当額と比較して高額であるため、仕入金額の一部は法人税法上の寄附金の額に当たるなどとして更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分の一部の取消しを求めた事案で、国税不服審判所は、仕入金額の一部が寄附金の額に該当するとはいえないと判断した。
原処分庁は、請求人が取締役と親族関係にある業者から仕入れた資材の仕入金額は、時価相当額と比較して不相当に高額であり、また、取締役が「取引に係る仕入価格は通常より少し上乗せしている、いわゆる親戚価格である」旨の申述をしており、仕入単価は、一定の金額が上乗せされていたものと推認され、時価相当額との差額が「実質的に贈与したと認められる金額」に当たるから、その部分の金額は寄附金に該当する旨主張した。
対して請求人は、 (1)本件の仕入単価計算式は、飽くまでも、請求人が仕入先と仕入単価を交渉するに当たり、請求人の仕入担当者が参考にする考え方であるにすぎないこと、(2)取締役が、原処分庁に対して、「親族事業者との取引について通常より少し上乗せした親戚価格である」と説明したことはないことなどと反論し、仕入金額には、「実質的に贈与したと認められる金額」が存在しないとして処分の取消しを求めた。
裁決は、原処分庁が時価相当額を算出するために用いた計算式には合理性が認められるものの、原処分庁が計算に用いた具体的な数値については、これを用いることが相当であるとはいえなから、原処分庁が算出した仕入金額は時価相当額とは認められないほか、審判所に提出された証拠資料や審判所の調査及び審理の結果によっても、ほかに仕入金額が時価相当額に比して不相当に高額とうかがわせる事実は認められないと指摘した。
また、原処分庁は、本件業者に対する仕入単価は、一定の金額が上乗せされた「いわゆる親戚価格」である旨主張するが、仕入単価の決定は、本件業者と本件業者とは親族関係にない営業部長との間で交渉により決められており、本件取締役が仕入単価の決定に介入したとは認められないから、本件業者に係る仕入金額は、時価に比して不相当に高額であったとは認められないとも指摘し、原処分の一部を取り消している。
(2023年3月8日裁決)