菓子・パンDI過去最高更新、13ヵ月連続全産業超え

 コロナ禍で原材料価格高騰の影響を最も受けた業界の一つである菓子・パン業界だが、帝国データバンクが発表した同業界の最新景況レポートによると、菓子・パンの景気DI(50を境に上であれば「良い」、下であれば「悪い」)が過去最高を更新し、13ヵ月連続で全産業を上回ったことが分かった。菓子・パンDIをみると、2019年は10月に消費税率が10%に引き上げられ、37.4まで悪化したが、その後は年末にかけて復調した。

 2020年に入り新型コロナによる緊急事態宣言が発出されると、外食用や学校給食向けパンの需要が減少、菓子はガム・グミ・キャンディが苦戦し、観光地でのお土産やインバウンドによる需要も喪失したことで、菓子・パンDIは19.3まで急落。特に菓子の生産量は過去最大の落込みとなった。その後、感染予防策の徹底により外出制限が緩和され、菓子・パンDIは全産業のDIの回復とともに改善傾向を示していた。

 2022年に入ると、3年ぶりに規制のない大型連休や夏休みを迎えたことで人出が増加し、外食用やオフィス需要だけでなく、インバウンド需要や駅・空港での土産物需要も大幅に改善した。菓子・パンDIは、2023年4月に50.3まで上昇し、2002年5月の調査開始後初めて景気判断の分かれ目である50.0を超え、同年7月には50.8となり過去最高を更新した。その後、2023年10月まで13ヵ月連続で全産業のDIを上回っている。

 2023年1~9月期の菓子・パンへの1世帯あたりの支出金額(二人以上の世帯)は、「菓子」(前年同期比5.8%増)、「パン」(同3.4%増)ともに増加している(総務省「家計調査」)。また、帝国データバンクの調査によると、菓子・パン業界におけるコスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す「価格転嫁率」は、2022年12月時点は43.6%だったが、2023年7月には54.0%に上昇した。

 これは、コストが100円上昇した場合に54.0円を販売価格に反映したことを示しており、2022年12月と比較して10.4円転嫁が進んだことになる。加えて、人流回復による活況や、コロナ禍で抑制されていた観光地・行楽地での消費回復が、値上げによる買控えを上回ってプラスに働いたことが好材料となり、菓子・パンDIを押し上げた。菓子・パン業界は地域に根差した中小企業や個人事業者が多く、企業間の競争は激しさを増している。

 コスト増加などの先行き不透明感は残るものの、2022年以降の値上げラッシュは徐々に落ち着きつつあり、菓子・パン業界の景況感は堅調に推移する見通し。今後はさらに高まるインバウンド需要や消費者の健康志向・プチ贅沢志向の高まり、出社率の回復したオフィス需要など、多種多様なニーズの取り込みが需要獲得のカギとなる。

 同景況レポートは

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p231107.pdf