東京商工リサーチが発表した「2023年3月期のメインバンクを変更した中小企業動向調査」結果によると、同期決算の借入金合計は、メインバンクの「変更あり」1747社(構成比7.0%)が1兆3648億円、「変更なし」2万2873社(同92.9%)が11兆4,593億円で、4年連続で増加した。2023年の平均借入金は、「変更あり」が7億8100万円(2019年比17.7%増)で、「変更なし」(5億円、同10.8%増)の1.5倍以上だった。
メインバンクの「変更あり」のうち、借入金の「増加」は3割強(構成比33.0%)だったが、「減少」は50.4%と半数を占めた。2020年以降、コロナ禍の資金繰り支援策が相次いで実施。ゼロゼロ融資など資金繰り支援が本格化した2021年は、借入金が「増加」した企業は57.0%と6割に近かったが、コロナ関連支援策が行き渡った2022年は借入金の「増加」が33.1%に対し、「減少」が51.9%と、再び「減少」が「増加」を上回った。
借入金が月商の何倍かを示す「借入金月商倍率」(借入金総額÷年間売上高÷12)を5期推移で比較した。なお、各年無借金の企業は、借入金月商倍率の算出から除いた。2023年は、メインバンクの「変更あり」の借入金月商倍率は4.3ヵ月で、「変更なし」(3.5ヵ月)を0.8ヵ月上回った。2019年以降の5年間を通して、借入金月商倍率は「変更あり」が「変更なし」を上回っている。
2019年3月期から2023年同期の業績推移を比較すると、2023年の月商は、メインバンクの「変更あり」が3901億円(2019年3795億円)、「変更なし」が4兆5673億円(同4兆2728億円)となり、ともにコロナ禍前の2019年と比べ、売上は増加した。2023年の経常利益も同様に、「変更あり」が1692億円(2019年同期1482億円)、「変更なし」が2兆5019億円(同1兆9184億円)で、ともにコロナ禍以前と比較して増加した。
一方、2019年から2023年の月商伸長率を比較すると、「変更なし」が6.8%増で、「変更あり」の2.7%増を4.1ポイント上回った。経常利益伸長率ではさらに差が大きく、「変更なし」(伸長率30.4%)が「変更あり」(同14.1%)を16.3ポイント上回った。2023年の経常利益率は、「変更なし」が4.5%増で、「変更あり」の3.6%増を上回る。2019年以降の5年間では、「変更なし」が「変更あり」より高い利益率を維持している。
同調査結果は