不動産賃貸業等を営む請求人が不動産の売買取引及び不動産の売買の仲介取引に関して行った確定申告が、重加算税の賦課に当たるか否かで争われた事件で国税不服審判所は、請求人は、各取引の存在を把握しその所得金額等も含め申告すべきことを認識しながら、申告しないことを意図し、これらを除外した収支内訳書の下書を作成・提示して税務相談し、その結果に基づき確定申告をしたと判断、原処分庁の重加算税賦課処分を認めた。
請求人は、主たる業務である不動産賃貸の仲介の収支を管理する業績管理表実績と題する表は、請求人の事業全部に係る帳簿書類ではないことから、同表に不動産の売買取引(本件売買取引)及び不動産の売買仲介取引に関する記載がないとしても内容虚偽の帳簿書類の作成に当たらず、これらの取引の申告をしないことを意図したものではないから、事実の隠蔽又は仮装に当たらない旨主張した。
しかし裁決は、本件売買取引に関しては、請求人は、同取引の帳簿書類たる売買計算表を作成して利益を把握しており、同表により算出した本件各売買取引に係る所得金額等も含めて申告すべきであると知りながら、これを申告しないことを意図して、本件業績管理表のみに基づいて、本件売買取引に係る収入金額等を除外した内容虚偽の収支内訳書の下書を作成し、税務署での申告相談に、本件売買取引に係る書類を一切持参しなかった。
また、対応した職員にその下書を提示して相談した上で、その結果に基づいて、所得金額等を意図的に過少に記載して確定申告をしたことから、国税通則法に規定する隠蔽又は仮装が認められる。また、本件売買仲介取引に関しては、請求人は、仲介手数料収入の申告の必要性を認識していたと推認でき、その収支の記録が存在しないのは、本件売買仲介取引に係る所得金額等を申告する意図がなかったことに起因すると指摘。
さらに、上記申告相談の際に、対応した職員に対し、本件売買仲介取引に係る所得について何も明らかにしていないこと、調査の当初の言動は、本件売買仲介取引を隠蔽する意図に基づくものと推認できることからすると、当初から申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったと認められ、国税通則法に規定する隠蔽又は仮装が認められると判断して、請求人の主張を立ち退けている。
(2023年2月8日裁決)